財務諸表の作成(P/L・B/S)
財務諸表は、決算整理後の残高を収益・費用と資産・負債・純資産に切り分け、決まった様式に書き直したものです。 損益計算書は売上総利益800,000円、営業利益310,000円、税引前当期純利益300,000円、当期純利益210,000円の順に4つの利益を出します。
決算整理が終わった残高から、損益計算書と貸借対照表を最後まで書き上げられるようになります。勘定科目名を表示科目名に読み替え、貸倒引当金と減価償却累計額を控除形式で表示できるようになります。当期純利益を繰越利益剰余金に入れて、貸借対照表の左右が一致することを自分で確かめられるようになります。
近年の第3問はP/L・B/S作成型が最も多く出ます。決算整理の計算そのものは単元31から34までと単元16・18で終わっていて、この単元で増えるのは書き写すときの名前の付け替えと表示の仕方だけです。ところが失点はそこに集中します。35点をまとめて取りにいく単元です。
財務諸表は、決算整理後の残高を2つに切り分けたもの
決算整理をすべて終えた状態を一覧にしたものが、決算整理後残高試算表です。ここには資産・負債・純資産・収益・費用の5要素が、勘定科目の名前のまま縦に並んでいます。
財務諸表を作る作業は、この一覧を2つに切り分けて、それぞれ決まった様式に書き直すことです。収益と費用を集めたものが損益計算書(P/L)、資産・負債・純資産を集めたものが貸借対照表(B/S)になります。
2つは対象にしている時間の幅が違います。ミナタカ商事の損益計算書は、×1年4月1日から×2年3月31日までの1年間にいくら儲けたかを表します。貸借対照表は、×2年3月31日という1日に、何をどれだけ持っていて、いくら返す義務があるかを表します。P/Lの見出しには期間が、B/Sの見出しには日付が入ります。この違いは見出しの書き方にそのまま出ます。
第3問でこの形式が出るとき、答案用紙にはP/LとB/Sの枠と表示科目名がすでに印刷されていて、受験者は金額を入れていきます。やることは3つです。①決算整理仕訳を切ります。②各勘定の期末残高を出します。③表示科目名に直して枠に金額を書きます。①と②は単元31から34までと単元16・18で学んだことの繰り返しで、新しい計算はほとんどありません。この単元で新しく増えるのは③だけです。そして第3問の失点は、この③に集中します。
損益計算書は、利益を4回に分けて出す
損益計算書は、上から下へ読んでいくと利益が4回出てくる形をしています。ミナタカ商事の完成した損益計算書は次のとおりです。
| 損益計算書(×1年4月1日〜×2年3月31日) | 金額(円) |
|---|---|
| Ⅰ 売上高 | 1,400,000 |
| Ⅱ 売上原価 | 600,000 |
| 売上総利益 | 800,000 |
| Ⅲ 販売費及び一般管理費 | |
| 給料 | 240,000 |
| 支払家賃 | 120,000 |
| 保険料 | 10,000 |
| 通信費 | 36,000 |
| 水道光熱費 | 16,000 |
| 減価償却費 | 60,000 |
| 貸倒引当金繰入 | 8,000 |
| 計 | 490,000 |
| 営業利益 | 310,000 |
| Ⅳ 営業外費用 | |
| 支払利息 | 10,000 |
| 税引前当期純利益 | 300,000 |
| 法人税、住民税及び事業税 | 90,000 |
| 当期純利益 | 210,000 |
4つの利益は、上の利益から次のグループの費用を引くだけです。
- 売上総利益=1,400,000−600,000=800,000
- 営業利益=800,000−490,000=310,000
- 税引前当期純利益=310,000−10,000=300,000
- 当期純利益=300,000−90,000=210,000
販売費及び一般管理費の合計は、240,000+120,000+10,000+36,000+16,000+60,000+8,000=490,000です。
費用をどのグループに入れるかは、本業に関係するかどうかで決まります。給料も支払家賃も減価償却費も、文房具を仕入れて売るという本業のために使ったお金なので、販売費及び一般管理費に入ります。支払利息は銀行からお金を借りたことで発生した費用で、商品を売る活動そのものとは別なので、営業外費用に置きます。この置き場所を1つ間違えると、売上総利益と税引前当期純利益は正しいのに営業利益の行だけがずれます。
貸借対照表は、現金に近いものから並べる
貸借対照表は、左に資産、右に負債と純資産を並べます。両側の合計は必ず一致します。ミナタカ商事の完成した貸借対照表は次のとおりです。
| 資産 | 金額(円) | 負債・純資産 | 金額(円) |
|---|---|---|---|
| 現金 | 128,000 | 買掛金 | 200,000 |
| 当座預金 | 820,000 | 借入金 | 500,000 |
| 売掛金 400,000 | 未払費用 | 10,000 | |
| 貸倒引当金 △8,000 | 392,000 | 未払法人税等 | 90,000 |
| 商品 | 200,000 | 負債合計 | 800,000 |
| 前払費用 | 230,000 | 資本金 | 1,000,000 |
| 備品 300,000 | 繰越利益剰余金 | 210,000 | |
| 減価償却累計額 △60,000 | 240,000 | 純資産合計 | 1,210,000 |
| 資産合計 | 2,010,000 | 負債・純資産合計 | 2,010,000 |
並び順にも決まりがあります。資産は、現金に近いものから先に書きます。現金、当座預金、売掛金、商品、前払費用のように1年以内にお金になるものを上に置き、備品のように何年も使い続けるものを下に置きます。この並べ方を流動性配列法といいます。負債も同じ考え方で、早く支払うものを上に置きます。答案用紙にはこの順で行が印刷されているので、順番を自分で考える場面はほとんどありません。ただし、どこに何が来るかを知っていると、書き込む行を探す時間が短くなります。
前払費用230,000円は、支払家賃の前払分120,000円と保険料の前払分110,000円を合わせた金額です。計算は120,000+110,000=230,000です。決算整理では家賃と保険料を2本に分けて仕訳しましたが、貸借対照表では前払費用の1行にまとめて表示します。答案用紙に「前払費用」の行が1つしかないときは、必ず両方を足してから書きます。
勘定科目名と表示科目名の読み替え
勘定科目名は帳簿の中で使う名前、表示科目名は財務諸表に印刷される名前です。この2つは、一致するものと一致しないものがあります。第3問でいちばん多い失点はここで起きます。答案用紙にはすでに表示科目名が印刷されているので、下書きにある勘定科目名と見比べて、どの行に書くのかを自分で判断することになります。
| 勘定科目名(帳簿) | 表示科目名(財務諸表) | 載る場所 |
|---|---|---|
| 繰越商品 | 商品 | B/S 資産 |
| 仕入 | 売上原価 | P/L |
| 売上 | 売上高 | P/L |
| 法人税等 | 法人税、住民税及び事業税 | P/L |
| 当座借越 | 短期借入金 | B/S 負債 |
| クレジット売掛金 | 売掛金 | B/S 資産 |
| 所得税預り金・社会保険料預り金 | 預り金 | B/S 負債 |
| 現金・小口現金・当座預金・普通預金・定期預金 | 現金及び預金 | B/S 資産 |
読み替えが起きる理由は2つに分けられます。1つは、帳簿では処理の都合で細かく分けているものを、外部に見せるときは1行にまとめるからです。預金が当座なのか普通なのか、預り金の中身が所得税なのか社会保険料なのかは、会社の外の人にとって区別する必要がありません。もう1つは、帳簿の名前が動作を表しているのに対して、財務諸表の名前が中身を表しているからです。「仕入」は仕入れるという行為の名前ですが、損益計算書に載るのは売れた分の原価なので「売上原価」といいます。「繰越商品」は次期へ繰り越すという処理の名前ですが、貸借対照表に載るのは決算日に倉庫にある商品そのものなので「商品」といいます。
ミナタカ商事の貸借対照表では、現金128,000円と当座預金820,000円を分けて表示しています。答案用紙に「現金及び預金」の行が1つだけ印刷されているときは、128,000+820,000=948,000をまとめて書きます。どちらの様式で答えるかは、印刷されている行を見て決めます。
当座借越には注意してください。当座預金の残高を超えて引き出された状態を当座借越といい、これは銀行からの一時的な借入です。したがって貸借対照表では資産のマイナスではなく、負債の「短期借入金」として右側に表示します。ミナタカ商事の当座預金は期末まで残高820,000円のプラスなので、この処理は出てきません。
貸倒引当金と減価償却累計額は、資産から控除して表示する
貸倒引当金と減価償却累計額は、どちらも資産のマイナスを表す勘定です。定位置は貸方ですが、貸借対照表では右側の負債には書きません。左側の資産の中に、対応する資産のすぐ下へマイナスとして書きます。これを控除形式といいます。
売掛金と貸倒引当金は、次のように2行で並べます。
| 科目 | 内訳(円) | 差引後(円) |
|---|---|---|
| 売掛金 | 400,000 | |
| 貸倒引当金 | △8,000 | 392,000 |
備品と減価償却累計額も同じ形です。
| 科目 | 内訳(円) | 差引後(円) |
|---|---|---|
| 備品 | 300,000 | |
| 減価償却累計額 | △60,000 | 240,000 |
計算は引き算だけです。
- 売掛金の差引後=400,000−8,000=392,000
- 備品の差引後=300,000−60,000=240,000
資産合計に入るのは、差引前ではなく差引後の金額です。ミナタカ商事の資産合計を確かめます。
128,000+820,000+392,000+200,000+230,000+240,000=2,010,000
もし売掛金を400,000のまま、備品を300,000のまま足すと2,078,000になり、負債・純資産合計2,010,000と一致しません。この差額68,000は、8,000+60,000です。合計が合わずに差額が出たときは、まずこの2つを足してしまっていないかを疑ってください。差額が控除項目の金額とぴったり一致することは多く、原因を探す手がかりになります。
答案用紙によっては、はじめから差引後の金額だけを書く様式もあります。その場合は「売掛金(貸倒引当金控除後)」のように印刷されているので、392,000だけを1行に書きます。控除形式か差引後だけかは、印刷されている行数を数えれば判断できます。
当期純利益が繰越利益剰余金へ入り、P/LとB/Sがつながる
損益計算書と貸借対照表は別々の表ですが、1か所だけつながっています。損益計算書のいちばん下にある当期純利益が、貸借対照表の純資産にある繰越利益剰余金へ入ります。この1本の線が、この単元でいちばん大事な部分です。
ミナタカ商事は設立初年度なので、期首の繰越利益剰余金は0円です。したがって計算は次のようになります。
繰越利益剰余金=期首0+当期純利益210,000=210,000
2期目以降も式の形は変わりません。期首の繰越利益剰余金にその期の当期純利益を足すだけで、期首の数字が0でなくなるだけです。
この線が通ると、貸借対照表の左右が一致します。
- 純資産合計=1,000,000+210,000=1,210,000
- 負債・純資産合計=800,000+1,210,000=2,010,000
- 資産合計=2,010,000
順番を逆にたどると、そのまま検算になります。資産合計から負債合計と資本金を引きます。
2,010,000−800,000−1,000,000=210,000
この210,000が損益計算書の当期純利益と一致すれば、P/LとB/Sの両方が正しく作れています。一致しなければ、どちらかに間違いがあります。P/Lで求めた利益と、B/Sの差額として求めた利益は、別のルートをたどって同じ数字になります。ここが決算のいちばん確かな検算です。
繰越利益剰余金に入れるのは、税引前当期純利益300,000ではなく、法人税等を引いたあとの当期純利益210,000です。法人税等も会社が負担する費用なので、株主のものとして会社に残る利益は、それを引いたあとの金額になります。
答案用紙を埋める順番と、時間の使い方
第3問でP/L・B/S作成が出たときの手順を、順番どおりに書きます。
- 決算整理事項を上から読み、下書き用紙に仕訳を切ります。ミナタカ商事の場合は、売上原価の算定、貸倒引当金の設定、減価償却、前払費用の計上が2本、未払費用の計上、法人税等の計上で、合計7本です。
- 決算整理前の残高に、切った仕訳を加減して各勘定の期末残高を出します。
- 答案用紙に印刷された表示科目名を見ながら、対応する残高を書き入れます。名前が違うものは読み替え表で確認します。
- 損益計算書を上から埋めて、当期純利益を出します。
- その当期純利益を貸借対照表の繰越利益剰余金に書き、左右の合計が一致するかを確かめます。
時間の目安は、決算整理仕訳に20分、記入に20分、検算に10分です。埋める順番はP/Lが先です。当期純利益を先に確定させないと、貸借対照表の繰越利益剰余金が空欄のままになり、合計の検算もできません。B/Sから先に埋めると、最後の1行だけ書けずに止まります。
合計が合わないときでも、合計欄を空欄にしないでください。P/L・B/S作成問題は行ごとに配点があり、合計欄が違っていても、正しく書けた行にはそのまま点が入ります。1行の間違いで全部を落とすことはありません。残り時間が少ないときは、原因を探して止まるより、確実に書ける行から先に埋めるほうが点は伸びます。
会計システムでは、勘定科目や補助科目という整理用のタグを会社ごとに設定します。精算表で組んだ数字と外部に出す決算書とで表示が変わるのも、同じ読み替えです。
この単元の確認問題
答えを見る前に、まず自分の言葉で答えてみてください。言葉にできないところが、そのまま本試験で止まるところです。
Q. 決算整理後の残高一覧に「支払利息10,000円」と「未払費用10,000円」があります。それぞれ損益計算書と貸借対照表のどちらに載りますか。
A. 支払利息は損益計算書、未払費用は貸借対照表に載ります。
支払利息は費用なので、収益と費用を集めた損益計算書へ行きます。未払費用は負債なので、資産・負債・純資産を集めた貸借対照表へ行きます。金額が同じでも、5要素のどれかで行き先が決まります。
Q. ミナタカ商事の販売費及び一般管理費の合計は490,000円、売上総利益は800,000円、支払利息は10,000円です。支払利息は販売費及び一般管理費に含めますか。また、営業利益はいくらになりますか。
A. 支払利息は含めません。営業利益は310,000円です。
支払利息は借入に伴う費用で、商品を仕入れて売る本業の活動とは別なので、営業外費用に置きます。したがって営業利益は800,000−490,000=310,000円です。支払利息はこのあと引いて、税引前当期純利益300,000円になります。
Q. ミナタカ商事の負債は、買掛金200,000円、借入金500,000円、未払費用10,000円、未払法人税等90,000円です。負債合計はいくらですか。資本金1,000,000円はこの合計に入りますか。
A. 負債合計は800,000円です。資本金は入りません。
200,000+500,000+10,000+90,000=800,000です。負債は外部に返す義務があるものだけを集めます。資本金は株主が出したお金で返す義務がないため、負債ではなく純資産に入ります。
財務諸表の作成(P/L・B/S)は、読んで分かることと、本番で点になることが別です。点にするための材料はこちらにまとめてあります。
- この単元の確認問題 あと4問
- この単元の問題 29問(どこをどう間違えたかまで解説)
- この単元のひっかけ 6件(本試験がどう引っかけてくるか)
- 財務諸表ラボ(切った仕訳が貸借対照表と損益計算書のどこに現れるかを画面で追う)
- この単元をそのまま簿記専用AIチューターに質問できます
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「第8章 決算 ― 1年をしめくくる」の他の単元
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- 単元31 決算手続きの全体像
- 単元32 売上原価の算定【決算整理】
- 単元33 経過勘定と再振替仕訳【決算整理】
- 単元34 その他の決算整理事項【決算整理】
- 単元35 決算整理後残高試算表
- 単元36 帳簿の締切と損益振替
- 単元37 精算表
この単元を、手を動かして確かめる
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