経過勘定と再振替仕訳【決算整理】
費用と収益は、お金が動いた期ではなく、その費用や収益が属する期に計上します。 次期の分を切り離すのが前払費用と前受収益、当期の分を付け足すのが未払費用と未収収益です。
前払費用・前受収益・未払費用・未収収益の4つを、当期の分と次期の分に月割で切り分けて仕訳できるようになります。4つの経過勘定がそれぞれ資産なのか負債なのかを、権利か義務かという1本の基準で判断できるようになります。翌期首の再振替仕訳を、決算整理仕訳の逆仕訳として自分で書けるようになります。
経過勘定は決算整理の中でも出題頻度が高く、第3問の財務諸表作成・精算表・後T/Bのどの形式でもほぼ必ず1つは含まれます。月割計算と、4つの科目が資産か負債かの判断がそのまま得点になります。再振替仕訳は第1問で単独の仕訳問題として問われることもあります。
「払った日」と「その費用が属する期間」はずれます
ミナタカ商事は×1年10月1日に、向こう1年分の事務所家賃240,000円を当座預金から支払いました。このときの仕訳は次のとおりです。
(借)支払家賃 240,000 /(貸)当座預金 240,000
支払った時点ではこれで正しい処理です。ただしミナタカ商事の決算日は×2年3月31日です。この240,000円が対応しているのは×1年10月から×2年9月までの12か月分で、そのうち当期に入っているのは×2年3月までの6か月分だけです。残りの6か月分は、まだ使っていない次期の家賃です。
簿記では、費用と収益を「お金が動いた期」ではなく「その費用や収益が属する期」に計上します。そのため決算のときに、次期に属する分を当期の費用から取り除いたり、まだ払っていなくても当期に属する分を費用に加えたりする調整が必要になります。この調整に使う4つの科目が経過勘定です。
- 前払費用:すでに払ったが、次期に属する分(当期の費用を減らす)
- 前受収益:すでに受け取ったが、次期に属する分(当期の収益を減らす)
- 未払費用:まだ払っていないが、当期に属する分(当期の費用を増やす)
- 未収収益:まだ受け取っていないが、当期に属する分(当期の収益を増やす)
「前」で始まる2つは、すでにお金が動いていて次期の分を切り離すものです。「未」で始まる2つは、まだお金が動いていない当期の分を付け足すものです。
この切り分けを、費用と収益を期間に対応させる、といいます。決算整理の中でも経過勘定は、現金や預金がまったく動かないまま仕訳だけが立つ点が特徴です。第3問では、問題文の末尾に「家賃は毎年10月1日に向こう1年分を支払っている」といった1文が置かれ、そこからこの処理が必要だと読み取ることになります。
何か月分かを数える
経過勘定の計算はほぼすべて月割です。使う式は1つだけです。
1年分の金額 ÷ 12か月 × 該当月数
該当月数は、カレンダーを月単位で書き出して数えるのが確実です。ミナタカ商事の家賃で確認します。支払いは×1年10月1日、契約期間は12か月です。
- 当期分:×1年10月・11月・12月、×2年1月・2月・3月=6か月
- 次期分:×2年4月・5月・6月・7月・8月・9月=6か月
6か月+6か月=12か月となり、契約期間の12か月がすべてどちらかに割り振られました。この「当期分+次期分=契約期間」が合っているかどうかが、月数の数え間違いを防ぐ検算になります。
金額に直します。
- 当期分:240,000円÷12か月×6か月=120,000円
- 次期分:240,000円÷12か月×6か月=120,000円
利息の場合だけは年利率が入り、元本×年利率×該当月数÷12か月という形になります。1年分の利息をいったん求めてから月割にする、という順番で計算しても同じ答えになります。
日付が月の途中になるときの日割計算は、3級では求められません。問題文が「10月1日から」のように月初を指定してくるので、月単位で数えれば足ります。
もう1つ、次期分を先に数えてしまう方法もあります。決算日の翌日である×2年4月1日から契約終了の月までを数えれば、それがそのまま前払費用になる月数です。前払費用と前受収益は次期の分を求める処理なので、この数え方のほうが速く済みます。
前払費用① 家賃の6か月分を次期へ送る
ミナタカ商事の決算整理仕訳を実際に書きます。10月1日に支払った家賃240,000円のうち、次期に属する分を前払費用に振り替えます。
計算:240,000円÷12か月×6か月=120,000円
(借)前払費用 120,000 /(貸)支払家賃 120,000
貸方に支払家賃を書くのは、費用を取り消しているからです。費用のホームポジションは借方なので、反対側の貸方に書けば減ります。この結果、支払家賃の残高は240,000円−120,000円=120,000円になり、これが当期のP/Lに載る支払家賃の金額です。
減らした120,000円は消えてなくなるわけではなく、借方の前払費用に移ります。前払費用は資産なのでB/Sに残り、次期に持ち越されます。当期の費用を減らして、その分を次期に送る、という2つの動きが1本の仕訳で同時に起きています。
決算整理仕訳を書く前に、必ず整理前の残高を確認してください。この仕訳の相手科目は支払家賃であり、当座預金ではありません。決算日にお金は1円も動いていないためです。
この仕訳を反映すると、決算整理後残高試算表には支払家賃120,000円と前払費用120,000円が並びます。前者はP/Lへ、後者はB/Sへ流れます。1本の決算整理仕訳が2つの財務諸表に分かれて着地する、という形をここで押さえておくと、精算表を書くときに迷いません。
前払費用② 保険料はほとんどが次期の分
ミナタカ商事は×2年3月1日に、保険料120,000円(×2年3月1日からの1年分)を当座預金から支払いました。期中の仕訳は次のとおりです。
(借)保険料 120,000 /(貸)当座預金 120,000
決算日は×2年3月31日なので、当期に属するのは×2年3月の1か月分だけです。残りの11か月分は次期に属します。
計算:120,000円÷12か月×11か月=110,000円
(借)前払費用 110,000 /(貸)保険料 110,000
当期のP/Lに載る保険料は120,000円−110,000円=10,000円になります。支払額の大半が前払費用になりますが、これで正しい処理です。決算日の直前に1年分を払えば、当期に属する分がわずかしかないのは当然のことです。
ミナタカ商事のB/Sでは、この保険料の110,000円と、前の節で振り替えた家賃の120,000円を合わせて、前払費用230,000円の1行で表示します。前払費用は複数の取引から発生しても、B/S上は1行にまとめます。
支払った時点でいったん全額を保険料として費用に計上しておき、決算で次期の分だけを抜き出す。これが3級での標準的な流れです。支払った時点では何か月分が当期に入るかがまだ決まっていないため、まず全額を費用にしておいて、決算日に月数が確定してから調整する、という順番になります。
未払費用 まだ払っていない当期の費用を引き寄せる
ミナタカ商事は×1年4月1日に、銀行から500,000円を借り入れました。年利2%で、利息は元本とともに×2年4月1日に返済する契約です。つまり当期中に利息は1円も支払っていません。
それでも、お金を借りていた期間は×1年4月1日から×2年3月31日までの12か月あります。その12か月分の利息は当期に発生しているので、当期の費用として計上します。
計算:500,000円×2%×12か月÷12か月=10,000円
(借)支払利息 10,000 /(貸)未払費用 10,000
借方の支払利息で当期の費用を10,000円増やし、貸方の未払費用で「次期に払わなければならない義務」を負債として計上します。現金も当座預金も動いていませんが、この仕訳は必要です。
前払費用が「払いすぎた分を次期へ送る」処理だったのに対して、未払費用は「まだ払っていない分を当期に引き寄せる」処理です。方向が逆なので、決算整理仕訳での位置も逆になります。前払費用は借方、未払費用は貸方です。
未払費用は、B/Sでは負債の部に未払費用として表示します。ミナタカ商事のB/Sには、買掛金200,000円や借入金500,000円と並んで、未払費用10,000円が載ります。
なお、物やサービスを買って代金が確定しているものは未払金で処理します。未払費用を使うのは、家賃や利息のように時の経過にしたがって少しずつ発生していくものです。
前受収益と未収収益
ここまでの3本は、ミナタカ商事に実際にある取引でした。残る前受収益と未収収益は、ミナタカ商事が文房具の卸売だけを行っていて、土地を貸したり資金を貸し付けたりしていないため、該当する取引がありません。この節だけ設例の外の数字を使います。
前受収益×2年1月1日に、土地の賃貸料1年分120,000円を現金で受け取り、受取地代として処理していたとします。決算日は×2年3月31日なので、当期分は1月から3月までの3か月、次期分は9か月です。
計算:120,000円÷12か月×9か月=90,000円
(借)受取地代 90,000 /(貸)前受収益 90,000
収益のホームポジションは貸方なので、借方に書けば減ります。当期の受取地代は120,000円−90,000円=30,000円になります。
未収収益×1年10月1日に300,000円を年利2%で貸し付け、利息は返済時にまとめて受け取る契約だとします。当期に発生した利息は、10月から3月までの6か月分です。
計算:300,000円×2%×6か月÷12か月=3,000円
(借)未収収益 3,000 /(貸)受取利息 3,000
貸方の受取利息で当期の収益を増やし、借方の未収収益で「受け取る権利」を資産として計上します。
4つとも、相手科目は必ず費用か収益になります。前払費用と未払費用の相手科目は費用、前受収益と未収収益の相手科目は収益です。どの科目を相手にするかは、期中にその取引をどの科目で処理していたかを問題文から探せば決まります。
4つのうちどれが資産で、どれが負債か
経過勘定は名前に「費用」「収益」が入っているため、P/Lに載る科目だと思いこみやすいところです。実際には4つとも資産か負債であり、すべてB/Sに載ります。5要素に還元すると次のようになります。
- 前払費用=資産。代金を先に払っているので、これからサービスを受ける権利が残っている
- 未収収益=資産。サービスを先に提供しているので、代金を受け取る権利がある
- 未払費用=負債。サービスを先に受けているので、代金を払う義務がある
- 前受収益=負債。代金を先に受け取っているので、これからサービスを提供する義務がある
判断の基準は1本だけです。権利なら資産、義務なら負債です。名前の「費用」「収益」の部分は、相手科目が費用なのか収益なのかを表しているだけで、その科目自体の分類とは関係がありません。
この分類は、決算整理仕訳での定位置とも一致します。資産である前払費用と未収収益は借方に書き、負債である未払費用と前受収益は貸方に書きます。そして相手科目は必ず費用か収益で、反対側に入ります。
試験では、財務諸表を作る問題でこの分類が直接問われます。前払費用をP/Lの費用の欄に書いてしまうと、その分だけB/Sの貸借も合わなくなります。仕訳を書く段階で「この科目はB/Sに残る」と意識しておくと、間違いに気づきやすくなります。
再振替仕訳 翌期首に必ず逆仕訳を切って戻す
経過勘定を使った決算整理仕訳は、翌期首の日付でそっくり逆の仕訳を切って元に戻します。これを再振替仕訳といいます。ミナタカ商事の翌期首は×2年4月1日です。
- 家賃:(借)支払家賃 120,000 /(貸)前払費用 120,000
- 保険料:(借)保険料 110,000 /(貸)前払費用 110,000
- 利息:(借)未払費用 10,000 /(貸)支払利息 10,000
借方と貸方を入れ替えただけで、金額は決算整理仕訳とまったく同じです。新しく計算する必要はありません。
なぜ戻すのか。 ×2年4月から9月までの家賃120,000円は、次期の費用です。決算では前払費用という資産に振り替えて当期の費用から外しましたが、次期に入ればその120,000円は次期の費用として計上し直さなければなりません。そのために期首に戻して支払家賃に振り替えます。戻し忘れると120,000円は前払費用のまま資産に居座り続け、次期の支払家賃が計上されないまま利益が過大になります。
未払費用も同じです。×2年4月1日に利息10,000円を実際に支払うと支払利息が借方に10,000円立ちますが、再振替仕訳で貸方に10,000円が入っているため、次期の支払利息は差引0円になります。この10,000円は当期に発生した費用なので、次期の費用にしてはいけないからです。当期に属する分だけを当期の費用とし、次期に属する分は次期へ送る、という区切りが、再振替仕訳によって保たれます。
なお、決算整理仕訳のすべてを翌期首に戻すわけではありません。減価償却費の計上や貸倒引当金の設定は再振替をしません。戻すのは経過勘定を使った仕訳だけです。経過勘定が、期をまたぐ金額をいったん預けておくための一時的な置き場所だからです。置いた金額は次期に入ったらすぐ本来の科目へ戻す、と覚えてください。
実務では1年分の保険料を月次で割り振り、毎月の費用として期間帰属をそろえます。当期と次期に分ける考え方は、決算だけの話ではありません。
この単元の確認問題
答えを見る前に、まず自分の言葉で答えてみてください。言葉にできないところが、そのまま本試験で止まるところです。
Q. ミナタカ商事が×1年10月1日に支払った家賃240,000円は、何月から何月までの12か月分ですか。またそのうち当期(×1年4月1日〜×2年3月31日)に入るのは何か月分ですか。
A. ×1年10月から×2年9月までの12か月分です。当期に入るのは×1年10月から×2年3月までの6か月分です。
向こう1年分の支払なので、支払った×1年10月がその期間の初月になります。当期は×2年3月31日で終わるため、×1年10月から数えて6か月目の×2年3月までが当期に属します。×2年4月以降の6か月分は次期の家賃です。
Q. 保険料120,000円が×2年3月1日からの1年分であるとき、決算日を×2年3月31日として、当期に属するのは何か月分で、次期に属するのは何か月分ですか。合計が12か月になることも確かめてください。
A. 当期は×2年3月の1か月分、次期は×2年4月から×3年2月までの11か月分です。1か月+11か月=12か月で合致します。
契約期間の初月は支払った×2年3月です。決算日が×2年3月31日なので、当期に入るのはその3月の1か月だけになります。残りの11か月は決算日の翌日以降の期間なので、すべて次期に属します。
Q. ミナタカ商事の決算整理として、支払家賃240,000円のうち次期に属する120,000円を前払費用に振り替える仕訳を書いてください。
A. (借)前払費用 120,000 /(貸)支払家賃 120,000
次期に属する分を当期の費用から外すので、費用である支払家賃を貸方に書いて減らします。減らした分は、これから家賃分のサービスを受ける権利として前払費用(資産)に振り替え、借方に書きます。
経過勘定と再振替仕訳【決算整理】は、読んで分かることと、本番で点になることが別です。点にするための材料はこちらにまとめてあります。
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