帳簿の締切と損益振替
決算の最後に帳簿を締め切ります。収益・費用は損益勘定に振り替えてゼロにし、資産・負債・純資産は次期繰越として翌期に引き継ぎます。
収益・費用の各勘定を損益勘定に集める振替仕訳が書けるようになります。損益勘定の残高を繰越利益剰余金へ振り替える意味を説明できるようになります。英米式決算法による次期繰越・前期繰越の書き方が分かるようになります。
決算の最後にやるのが帳簿の締切です。ここで、当期の収益と費用がいったんゼロになり、翌期は白紙から始まります。一方で資産・負債・純資産は翌期に持ち越されます。この違いこそが、損益計算書と貸借対照表の性格の違いそのものです。
リセットされるものと、持ち越されるものがある
決算が終わったら、帳簿を締め切って翌期の準備をします。このとき、勘定は2つのグループに分かれます。
| グループ | 締切のしかた | 翌期はどうなるか |
|---|---|---|
| 収益・費用 | 損益勘定へ振り替えてゼロにする | 白紙から始まる |
| 資産・負債・純資産 | 次期繰越として繰り越す | 残高を引き継ぐ |
収益と費用がリセットされるのは、それが「当期1年間の成績」だからです。翌期の売上に当期の売上が混ざっていたら、その年の成績が分かりません。損益計算書が「1年間」を表す書類なのはこのためです。
資産と負債が引き継がれるのは、それが「期末時点の状態」だからです。3月31日に現金が128,000円あったなら、4月1日も128,000円あります。日付が変わっただけで消えるはずがありません。貸借対照表が「ある一時点」を表す書類なのはこのためです。
手順は3段階です。
- 収益・費用を損益勘定に集める(損益振替)
- 損益勘定の残高を繰越利益剰余金へ振り替える(資本振替)
- 資産・負債・純資産を次期繰越として締め切る
手順① 損益振替 ― 収益と費用を損益勘定へ集める
損益は、決算のときだけ使う集計用の勘定です。ここに1年分の収益と費用を全部集めます。
収益を振り替える
売上は貸方に残高があるので、借方に書いて消します。
(借) 売上 1,400,000 / (貸) 損益 1,400,000
費用を振り替える
費用は借方に残高があるので、貸方に書いて消します。ミナタカ商事の費用をまとめて振り替えます。
(借) 損益 1,190,000 / (貸) 仕入 600,000
/ 給料 240,000
/ 支払家賃 120,000
/ 保険料 10,000
/ 通信費 36,000
/ 水道光熱費 16,000
/ 減価償却費 60,000
/ 貸倒引当金繰入 8,000
/ 支払利息 10,000
/ 法人税等 90,000金額は決算整理後のものです。仕入が800,000円ではなく600,000円になっているのは、期末商品200,000円を繰越商品に振り替えたあとだからです(単元32)。支払家賃も前払分120,000円を引いたあとの120,000円です。
3級では法人税等も損益勘定に振り替えます。
この結果、損益勘定はこうなります。
損益 ───────────────────── 費用 1,190,000 │ 売上 1,400,000 ───────────────────── 差額 210,000 │
貸方が210,000円多い状態です。これが当期純利益です。
手順② 資本振替 ― 損益を繰越利益剰余金へ
損益勘定に残った差額210,000円は、会社が1年で稼いだ分です。これを繰越利益剰余金へ振り替えます。
(借) 損益 210,000 / (貸) 繰越利益剰余金 210,000
これで損益勘定もゼロになり、役目を終えます。
なぜ繰越利益剰余金なのか
稼いだ利益は株主のものとして会社に残ります。返済義務がないので純資産です(単元25)。だから当期純利益は、純資産の増加として貸借対照表に着地します。
ミナタカ商事の貸借対照表を見てください。
純資産 資本金 1,000,000 繰越利益剰余金 210,000
損益計算書の一番下にある当期純利益210,000円と、貸借対照表の繰越利益剰余金210,000円が同じ数字です。2つの書類はここでつながっています。
損失が出た年は逆向きになります。
(借) 繰越利益剰余金 / (貸) 損益
純資産が減ります。
手順③ 英米式決算法 ― 次期繰越と前期繰越
資産・負債・純資産は損益勘定に振り替えません。翌期に残高を引き継ぐからです。
締め切るときは、残高の反対側に次期繰越と朱書きして、貸借を合わせます。この方法を英米式決算法といいます。
当座預金勘定(資産)の締切
当座預金 ────────────────────── (借方合計)2,300,000│(貸方合計)1,460,000 │3/31 次期繰越 840,000 2,300,000│ 2,300,000 ────────────────────── 4/1 前期繰越 840,000 │
残高840,000円は借方にあるので、反対の貸方に「次期繰越」と書いて合計を一致させます。そして翌期の最初に、元の側(借方)へ「前期繰越」として書き戻します。
負債は逆です。買掛金なら残高が貸方にあるので、借方に次期繰越と書き、翌期首に貸方へ前期繰越と書きます。
次期繰越を書く側を間違えないことが唯一のコツです。残高のある側ではなく、反対側に書きます。合計を一致させるための調整だからです。
収益・費用の勘定には次期繰越を書きません。損益勘定へ振り替えた時点で残高がゼロになっているからです。
会計システムでは、締めた月に鍵をかけて仕訳を入れられなくします。帳簿を締め切るという簿記の手続きが、そのまま操作制限として実装されています。
この単元の確認問題
答えを見る前に、まず自分の言葉で答えてみてください。言葉にできないところが、そのまま本試験で止まるところです。
Q. 売上勘定の残高は翌期に引き継がれますか。
A. 引き継がれません。損益勘定に振り替えてゼロにします。
収益は当期1年間の成績を表すものだからです。翌期に持ち越すと、どの年の売上か分からなくなります。
Q. 費用を損益勘定に振り替えるとき、費用の各勘定は借方と貸方のどちらに書きますか。
A. 貸方です。損益勘定の借方に集めます。
費用は借方に残高があるので、消すには反対側の貸方に書く必要があるからです。
Q. 損益勘定の貸方に210,000円の差額が残りました。どの科目へ振り替えますか。
A. 繰越利益剰余金です。
稼いだ利益は返済義務のない株主の持ち分になるからです。純資産の増加として貸借対照表に残ります。
帳簿の締切と損益振替は、読んで分かることと、本番で点になることが別です。点にするための材料はこちらにまとめてあります。
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- この単元の問題 10問(どこをどう間違えたかまで解説)
- この単元のひっかけ(本試験がどう引っかけてくるか)
- 財務諸表ラボ(切った仕訳が貸借対照表と損益計算書のどこに現れるかを画面で追う)
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