標準化とコンプライアンス
標準化にはデジュレスタンダードとデファクトスタンダードがあり、ISOやJISなどの規格が分野ごとに番号を割り当てています。コンプライアンスは法令遵守、情報倫理はネット社会での規範、コーポレートガバナンスは経営を健全に保つ仕組みです。
標準化の仕組みや代表的な国際規格の名称、コンプライアンス・情報倫理・コーポレートガバナンスの考え方を説明できるようになります。
標準化は製品やサービスの互換性を確保し、コンプライアンスは企業が法令を遵守し社会的信頼を得るための土台です。どちらも企業経営の基本的な枠組みとして試験で出題されます。
標準化の目的と代表的な規格
標準化とは、製品やサービス、業務のやり方について共通のルール(規格)を定めることです。標準化を行うことで、異なるメーカーの製品同士でも互換性を保てるようになり、品質のばらつきを抑えることができます。身近な例として、店頭の商品に印刷されているバーコードや、流通業界共通のJANコード、スマートフォンで読み取るQRコードなども、標準化によって広く普及した技術です。
標準化には、成り立ち方の違いによっていくつかの種類があります。国際機関や標準化団体が話し合って公式に定める規格をデジュレスタンダードと呼び、これに対して、特定の企業や製品が市場で圧倒的なシェアを獲得した結果、事実上の標準として広まったものをデファクトスタンダードと呼びます。また、複数の企業が業界団体を結成して独自に取り決める規格をフォーラム標準と呼びます。デジュレスタンダードは公式な手続きを経て定められる点、デファクトスタンダードは市場競争の結果として定まる点が異なります。
国際的な標準化を推進する代表的な組織がISO(International Organization for Standardization、国際標準化機構)です。電気・電子技術の分野を担当するIEC(International Electrotechnical Commission、国際電気標準会議)、電気電子技術者の専門家団体であるIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)、Webに関する技術標準を策定するW3C(World Wide Web Consortium)なども、IT分野でよく登場する標準化団体です。国内の工業規格としてはJIS(Japanese Industrial Standards、日本産業規格)があります。
ISOの規格は分野ごとに番号が割り当てられています。ISO 9000は品質マネジメントシステム、ISO 14000は環境マネジメントシステム、ISO 26000は社会的責任に関する手引き、ISO/IEC 27000は情報セキュリティマネジメントシステムに関する規格です。国内規格でも、JIS Q 31000はリスクマネジメント、JIS Q 38500はITガバナンスに関する規格として整備されています。
コンプライアンスと情報倫理
コンプライアンスとは、企業が法令や社会的なルール、企業倫理を守ることを意味します。単に法律に違反しないというだけでなく、社会的な常識やモラルに反しない行動をとることも含む、幅広い概念として理解されています。近年は、事業活動が人権に与える影響に配慮するビジネスと人権という考え方や、職場でのハラスメントを防止する取り組みも、コンプライアンスの重要なテーマとして位置づけられています。
インターネットが社会の基盤となった現在では、法令だけでなく、情報を扱ううえでの社会的規範やモラルである情報倫理を身につけることも欠かせません。事実と異なる情報を意図的に広めるフェイクニュースや、特定の集団を攻撃するヘイトスピーチは、情報倫理の観点から避けるべき行為です。また、自分と似た意見ばかりに囲まれて特定の考えが増幅されるエコーチェンバーと、AIによる情報の最適化によって自分の興味に近い情報しか届かなくなるフィルターバブルは、どちらもSNSで似た情報ばかりに囲まれる現象ですが、前者は人とのつながり方、後者はシステムによる情報の選別が原因になる点が違います。
一度インターネット上に公開された情報は完全には消せないことが多く、この性質はデジタルタトゥーと呼ばれます。ネット上でのマナーであるネチケット(ネットマナー)を守り、不特定多数への転送を求めるチェーンメールに関わらないこと、データのねつ造・改ざん・盗用を行わないことも、情報を扱う人間として基本の姿勢です。情報の真偽を確認するファクトチェックや、未成年者を有害サイトから守るフィルタリング(ペアレンタルコントロール)といった仕組みも広がっています。ネット上での誹謗中傷や権利侵害情報については、削除手続きなどを定めた情報流通プラットフォーム対処法も整備されています。倫理的・法的・社会的な課題を総合的にとらえる視点はELSI(Ethical, Legal and Social Issues)と呼ばれ、AI技術などの新しい分野で特に重視されています。
コーポレートガバナンスとその他の関連法
コーポレートガバナンス(企業統治)とは、経営者が独断で不正な経営を行わないよう、企業経営を監視・統制する仕組みのことです。株主総会や取締役会、監査役といった機関が、経営の透明性や適正性を確保する役割を担っています。コンプライアンスが「ルールを守ること」に重点を置くのに対し、コーポレートガバナンスは「経営そのものを健全に保つための仕組み」に重点を置いている、という違いで理解すると整理しやすくなります。
企業が組織内部の不正を発見し是正するための仕組みとして、内部統制報告制度があります。これは、上場企業などに対して、財務報告に関する内部統制の状況を評価し報告することを義務付ける制度です。また、企業の不正や法令違反を、内部の従業員が公益のために通報した場合に、通報者が解雇などの不利益な扱いを受けないよう保護する公益通報者保護法もコーポレートガバナンスと関わりの深い法律です。内部からの声を安心して届けられる環境を整えることは、不正の早期発見にもつながります。
行政の透明性を確保する仕組みとして、情報公開法があります。この法律により、行政機関が作成・保有する文書について、国民は誰でも開示を請求することができます。行政の活動が適正に行われているかを国民が確認できるようにすることが、この法律の目的です。企業が自らを律するコンプライアンスやガバナンスと異なり、情報公開法は行政機関の側に開示の義務を課す法律である点も押さえておきましょう。
このほか、企業活動が環境に与える影響に配慮するための法律も整備されています。廃棄物の適正な処理を定める廃棄物処理法、資源の有効利用を促すリサイクル法、脱炭素社会への移行を後押しするGX(グリーントランスフォーメーション)推進法などが代表的です。企業が事業を営むうえで意識すべき対象は、法令(コンプライアンス)、経営の仕組み(コーポレートガバナンス)、社会への説明責任(情報公開)、地球環境(環境関連法)というように広がっており、コンプライアンス、コーポレートガバナンス、情報公開、環境配慮は、いずれも企業が社会から信頼されて事業を続けていくための土台となる考え方です。
この単元の確認問題
答えを見る前に、まず自分の言葉で答えてみてください。言葉にできないところが、そのまま本試験で止まるところです。
Q. 特定の企業や製品が市場で高いシェアを獲得した結果、事実上の標準として広まったものを何と呼びますか。
A. デファクトスタンダードです。公式な手続きを経て定められるデジュレスタンダードとは異なり、市場での競争の結果として事実上の標準になったものを指します。
Q. 自分と似た意見の情報ばかりに囲まれることで特定の考えが増幅される現象を何と呼びますか。
A. エコーチェンバーです。AIによる最適化で自分の興味に近い情報しか届かなくなるフィルターバブルとあわせて、SNS利用時に注意すべき現象として知られています。
Q. 企業の不正を内部の従業員が公益のために通報した場合に、通報者を不利益な扱いから守る法律を何と呼びますか。
A. 公益通報者保護法です。企業や行政機関の不正・法令違反を通報した人が解雇などの不利益な扱いを受けないよう保護することを目的としています。
標準化とコンプライアンスは、読んで分かることと、本番で点になることが別です。点にするための材料はこちらにまとめてあります。
- この単元の問題 13問(どこをどう間違えたかまで解説)
- この単元のひっかけ(本試験がどう引っかけてくるか)
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