業務分析とデータ利活用
業務分析にはフローチャートやDFD、PERTなど業務の流れを可視化する手法があります。データ分析ではヒストグラムや散布図などの統計グラフ、回帰分析や標本抽出といった手法が使われ、ビッグデータやデータサイエンティストの役割も重要なキーワードです。
業務を把握・分析するための代表的な図法や、データを可視化・分析する統計手法の基本を説明できるようになります。データに基づいて意思決定を行う考え方の重要性も理解します。
業務分析とデータ利活用は、経営課題を可視化し改善につなげるための基礎知識です。ITパスポートでは図表を用いた業務分析の問題や、統計手法の名称と用途を問う問題が出題されます。
業務の把握と可視化
業務改善を行うには、まず現状の業務を正確に把握することが出発点になります。関係者の考えや現場の実態を集める方法として、質問項目をあらかじめ決めて尋ねる構造化インタビュー、大まかな方向だけ決めて自由に話してもらう半構造化インタビュー、テーマだけを決めて自由に語ってもらう非構造化インタビュー、多数の対象から回答を集めるアンケート、現場に赴いて実際の様子を観察するフィールドワークなどがあります。目的に応じてこれらを使い分けることが大切です。
把握した業務は図で可視化します。フローチャート(流れ図)は、業務や処理の手順を四角形や菱形などの記号と矢印で図式化し、順序や分岐点を視覚的に理解できるようにします。データの流れに着目したDFD(データフローダイアグラム)は、データがどこから発生し、どのように処理・保存・出力されるかを図示する手法です。原因を体系的に整理する特性要因図(フィッシュボーン図)は、結果に対する原因を「人」「機械」「方法」「材料」などに分けて洗い出します。目的や課題を階層的に枝分かれさせて整理する系統図、作業の順序と所要期間を矢印でつないで表すPERT(アローダイアグラム)もよく使われ、PERTから求められる、遅れがそのまま全体の遅れに直結する経路をクリティカルパスと呼びます。クリティカルパス分析を行うことで、全体の作業日程のうちどの作業に余裕がなく、優先して管理すべきかが分かります。
こうした業務分析手法は、単に図を描くこと自体が目的ではなく、業務の無駄や問題点を発見し、改善策を検討するための土台として使われます。試験では図の名称と用途の組み合わせを問う問題が多いため、「何を可視化するための図か」という観点で整理しておくと覚えやすくなります。例えば、手順の流れを見たいならフローチャート、データの流れを見たいならDFD、原因を洗い出したいなら特性要因図というように、目的から逆引きできるようにしておくと迷いにくくなります。業務の把握で集めた声と、これらの図で整理した情報を照らし合わせることで、現場の実感とデータの両方に基づいた業務改善の提案ができるようになります。
統計手法とグラフの活用
データを分析し意思決定に役立てるためには、目的に応じた統計手法やグラフを使い分けることが大切です。
ヒストグラムは、データの分布状況を棒グラフの形で表したもので、データがどの範囲にどれくらい集中しているかを把握できます。箱ひげ図は、データのばらつきや偏りを1本の図で表現でき、複数のグループを並べて比較しやすい特徴があります。散布図は、2つの項目の関係性を点の集まりで表すグラフで、点が右肩上がりなら正の相関、右肩下がりなら負の相関があると判断できます。関係の強さを数値で表す相関係数は−1から+1の値をとり、1や−1に近いほど強い相関を示します。ただし相関関係があっても、必ずしも一方がもう一方の原因である因果関係とは限らず、別の要因が両方に影響して見かけ上の相関が生じる擬似相関にも注意が必要です。
あるデータから別のデータの値を予測する手法が回帰分析で、データの傾向を最もよく表す直線を求める計算方法を最小二乗法と呼びます。業務改善の優先順位を決める際には、件数の多い項目から並べて累積比率を示すパレート図もよく使われ、「全体の8割の結果は2割の要因から生まれる」というパレートの法則の考え方はABC分析にもつながります。他にも、複数項目を同時に比較するレーダーチャートや、数値の大小を色の濃淡で表すヒートマップ、2つの分類項目を掛け合わせて件数を整理するクロス集計表(分割表)など、目的に合わせたグラフの選択が求められます。
グラフは正しく作れば理解を助けますが、軸の目盛りを不自然に省略したり、一部だけを切り取って強調したりすると、事実とは違う印象を与えてしまいます。データを他者に説明するときは、見た目の分かりやすさだけでなく、誤解を与えない誠実な表現になっているかを確認することも大切です。分析の前提となるデータそのものにも、外れ値や欠損値が含まれていることがあるため、集計に入る前にデータを確認し整える前処理も、正確な分析には欠かせない工程です。試験ではグラフの名称と使いどころを組み合わせて問う問題が多いため、「分布を見るならヒストグラム」「関係を見るなら散布図」のように目的別に整理しておくと得点しやすくなります。
ビッグデータと意思決定
企業活動の中で生み出されるデータの量は急速に増加しています。従来の方法では処理しきれないほど大量かつ多様なデータをビッグデータと呼び、量(Volume)・多様性(Variety)・速度(Velocity)の3つの頭文字から3つのVで特徴が説明されます。分析にあたっては、すべてのデータを対象とする全数調査のほか、対象全体である母集団から一部を取り出して調べる標本抽出もよく使われ、無作為に選ぶ単純無作為抽出や、グループに分けてから抽出する層別抽出などの方法があります。
ビッグデータを分析し経営に役立つ知見を導き出す専門人材がデータサイエンティストです。企業に散在するデータを一元的に管理・分析するデータウェアハウス、そこから有用な情報を取り出すデータマイニング、文章データを分析するテキストマイニング、経営状況をリアルタイムに可視化・分析する仕組みであるBI(Business Intelligence)などのツールが活用されます。誰でも利用できるよう公開されたオープンデータも、社外のデータを活用する際の選択肢の一つです。
分析結果は意思決定に活かします。条件と選択肢を樹形図で整理するデシジョンツリー、実際に近い条件で試してみるシミュレーションは、在庫管理や発注方式の検討にも使われます。また、勘や経験だけに頼らずデータに基づいて判断するデータドリブン経営の考え方や、自由に意見を出し合うブレーンストーミング、発言せずに意見を紙に書き出して共有するブレーンライティング、出てきた意見を似た内容ごとにまとめる親和図法といった問題解決の手法も、業務改善の現場で広く使われています。ブレーンストーミングは声の大きい人の意見に流されやすいという弱点がある一方、ブレーンライティングは全員が均等に意見を出しやすいという違いがあります。データ分析と話し合いの手法をあわせて使うことで、数字だけでは見えない現場の気づきも取り入れながら、業務改善を進めることができます。
QC七つ道具と、データを使う前の下ごしらえ
業務の問題を見つけるとき、思い付きで議論すると声の大きい意見に流れます。そこで、数値を図にして共通の土俵を作る道具立てが決まっています。品質管理の現場でまとめられた7つの手法がQC七つ道具です。
7つは、値のばらつきを柱状に表すヒストグラム、件数の多い順に棒で並べ折れ線で累計を重ねるパレート図、原因を魚の骨の形に分解する特性要因図(フィッシュボーン図)、2つの値の関係を点で見る散布図、時系列で並べて基準線から外れていないかを見る管理図、数え落としを防ぐために項目を並べて印を付けるチェックシート、そして条件ごとにデータを分けて比べる層別です。名前ではなく「何を見たいときに使うか」で覚えてください。ばらつきならヒストグラム、絞り込みならパレート図、原因の洗い出しなら特性要因図、関係の有無なら散布図です。
パレート図と結び付くのがABC分析です。累計の大きいものからA・B・Cに分け、重点的に管理する対象を決めます。上位の少数が全体の大半を占めるという傾向を利用した考え方で、在庫管理や商品構成の見直しでよく使われます。
条件と結果の組み合わせを表に整理する決定表(デシジョンテーブル)も覚えておきたい道具です。「会員である/購入金額が1万円以上」といった条件の組み合わせごとに、どう処理するかを一覧にします。文章で書くと読み落とす条件の抜けが、表にすると空欄として見えるのが利点で、業務ルールの整理やテスト項目の洗い出しに使われます。
そして、分析の前に必ず必要なのがデータの下ごしらえです。表記の揺れをそろえる、重複した顧客データを1件にまとめる名寄せを行う、欠けている値や明らかな異常値をどう扱うか決める、といった作業です。ここを飛ばすと、同じ会社が2社として数えられたまま集計され、出てきた数字を信じて誤った判断をすることになります。分析の質は、この下ごしらえで決まります。
集めたデータを誰でも図やグラフで見られるようにする道具がBIツールです。担当者が依頼のたびに集計する形から、必要な人が自分で見る形へ移すために使われます。
この単元の確認問題
答えを見る前に、まず自分の言葉で答えてみてください。言葉にできないところが、そのまま本試験で止まるところです。
Q. 結果に対する原因を「人・機械・方法・材料」などに分けて整理する図法を何と呼びますか。
A. 特性要因図(フィッシュボーン図)
特性要因図は問題の原因を体系的に洗い出すための図で、魚の骨のような形をしていることからフィッシュボーン図とも呼ばれます。
Q. 2つの項目の関係性を点の集まりで表し、相関の有無を視覚的に確認できるグラフを何と呼びますか。
A. 散布図
散布図は2つのデータをX軸・Y軸にとり、点の分布の傾向から正の相関・負の相関の有無を視覚的に判断できます。ただし相関があっても因果関係があるとは限りません。
Q. 統計学やプログラミングの知識を活かしてビッグデータから有用な知見を導き出す専門人材を何と呼びますか。
A. データサイエンティスト
データサイエンティストは膨大かつ多様なビッグデータを分析し、経営判断に役立つ知見を導き出す専門職です。
業務分析とデータ利活用は、読んで分かることと、本番で点になることが別です。点にするための材料はこちらにまとめてあります。
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- この単元のひっかけ 2件(本試験がどう引っかけてくるか)
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