【手形】約束手形
約束手形は、支払期日と金額を紙に書いて約束したものです。振り出した側が払う側、名宛人が受け取る側です。受け取ったら受取手形という資産、振り出したら支払手形という負債になります。
約束手形のしくみを説明できるようになります。振り出した側と受け取った側の仕訳を、それぞれ書けるようになります。満期日の決済を仕訳できるようになります。売掛金・買掛金との違いと、手形貸付金・手形借入金の使い分けが分かるようになります。
手形は第1問で1〜2問出ます。売掛金・買掛金と似ていますが、紙で支払期日を約束している点が違い、勘定科目も別に立てます。
ただしこの単元には期限があります。2027年4月1日以降の試験では、手形は3級の出題範囲から外れます。紙の約束手形が金融界全体で廃止されるためで、経過措置はありません。2027年3月までに受験する方は必要な単元、それ以降に受験する方は飛ばして単元13に進んでかまいません。代わりに残るのが電子記録債権・電子記録債務で、これは単元7で扱っています。
手形は、支払期日を紙に書いて約束したものです
掛け取引では「そのうち払います」という口約束で商品をやりとりしています。これに対して約束手形は、「×月×日に、この金額を、あなたに払います」と紙に書いて署名し、相手に渡すものです。
登場人物は2人です。
- 振出人……手形を書いて渡す人。お金を払う側
- 名宛人(受取人)……手形を受け取る人。お金をもらう側
口約束との違いは3つあります。支払期日がはっきりしていること、書面なので証拠力が強いこと、そして期日に払えないと信用を失うことです。手形が2回不渡りになると銀行取引が止まり、事実上は倒産します。掛け代金の支払いが少し遅れるのとは重さが違います。
この単元で使う金額は、設例のミナタカ商事には出てこない説明用の数字です。ミナタカ商事は手形を使わずに1年を終えているため、ここだけ独自の取引を置いています。金額はすべて1万円単位の丸い数字にしてあります。
受け取ったら資産、振り出したら負債
手形を受け取った側は、期日にお金をもらう権利を得ます。権利なので資産で、科目は受取手形です。手形を振り出した側は、期日に払う義務を負います。義務なので負債で、科目は支払手形です。
商品300,000円を売り上げ、代金は約束手形を受け取った(売った側)
(借) 受取手形 300,000 / (貸) 売上 300,000
商品200,000円を仕入れ、代金は約束手形を振り出した(買った側)
(借) 仕入 200,000 / (貸) 支払手形 200,000
売掛金・買掛金のところが、受取手形・支払手形に置き換わっただけです。考え方は同じで、権利は借方、義務は貸方です。
すでに掛けになっている代金を、あとから手形に切り替えることもあります。
買掛金150,000円の支払いのため、約束手形を振り出した
(借) 買掛金 150,000 / (貸) 支払手形 150,000
負債が負債に変わっただけで、金額は増えていません。支払方法が口約束から書面に変わったという意味です。
満期日には、当座預金で決済されます
手形の支払期日を満期日といいます。満期日になると、銀行を通じて自動的に決済されます。現金を持って行くのではなく、当座預金が動きます。
振り出した側(払う)
(借) 支払手形 200,000 / (貸) 当座預金 200,000
受け取った側(もらう)
(借) 当座預金 300,000 / (貸) 受取手形 300,000
振り出したときに立てた負債が消え、受け取ったときに立てた資産が消えます。手形は必ず、立てる仕訳と消す仕訳の2本セットで動くと考えてください。
満期日に振出人の当座預金が足りないと、手形は決済されません。これを不渡りといいますが、3級では処理まで問われません。
お金の貸し借りに手形を使うと、科目が変わります
手形は、商品売買だけでなくお金の貸し借りにも使われます。お金を貸すときに借用証書ではなく手形を受け取る、という形です。
このとき使う科目は受取手形・支払手形ではありません。手形貸付金(資産)と手形借入金(負債)を使います。
現金500,000円を貸し付け、約束手形を受け取った(貸した側)
(借) 手形貸付金 500,000 / (貸) 現金 500,000
約束手形を振り出して、現金500,000円を借り入れた(借りた側)
(借) 現金 500,000 / (貸) 手形借入金 500,000
科目を分ける理由は、中身がまったく違うからです。受取手形は商品を売った代金の回収を待っている状態ですが、手形貸付金は資金を貸している状態です。財務諸表を見る人にとって、この2つは意味が違います。
見分け方は1つだけです。その手形は、商品の売買から生まれたか、お金の貸し借りから生まれたか。問題文に「貸し付け」「借り入れ」と書いてあれば、手形貸付金・手形借入金です。
受取手形記入帳・支払手形記入帳
手形は枚数が多くなると、どの手形がいつ期日を迎えるのか分からなくなります。そこで、手形1枚ごとの明細を追う補助簿を作ります。受取手形記入帳と支払手形記入帳です。
記入する項目は決まっています。
- 手形の種類と番号
- 摘要(売上、売掛金など、その手形が生まれた原因)
- 支払人・振出人
- 振出日と満期日
- 支払場所(銀行名)
- 手形金額
- てん末……その手形が最後にどうなったか
第2問で問われるのは、たいていてん末欄です。ここに「当座入金」と書いてあれば満期日に決済されたということなので、受取手形を減らす仕訳が切られています。
補助簿の選択問題では、1つの取引が複数の補助簿に載ることに注意してください。たとえば「商品を売り上げ、約束手形を受け取った」なら、売上帳と受取手形記入帳の両方に記入されます。取引を分解して、動いた要素の数だけ帳簿があると考えると間違えません。
2027年4月1日以降は、手形が出題範囲から消えます
紙の約束手形は、2026年度末をもって金融界から廃止されます。これを受けて、2027年4月1日以降の試験では、受取手形・支払手形・手形貸付金・手形借入金は3級の出題範囲から外れます。経過措置はありません。
代わりに残るのが電子記録債権・電子記録債務です。これは手形の役割をそのまま電子化したもので、でんさいネットという仕組みを通じて記録されます。単元7で扱っています。
置き換えの対応は次のとおりです。
| 2027年3月まで | 2027年4月から |
|---|---|
| 受取手形 | 電子記録債権 |
| 支払手形 | 電子記録債務 |
| 手形貸付金・手形借入金 | 出題されない(貸付金・借入金で処理) |
仕訳の形はほとんど同じです。手形を振り出す代わりに発生記録の請求をする、というだけの違いなので、この単元を学んだ方が損をすることはありません。
受験日が2027年4月以降の方は、この単元を飛ばして単元13に進んでください。実務でも紙の手形を見ることはなくなります。
紙の約束手形は制度として終わりに向かっており、電子記録債権への移行が進んでいます。手形の考え方は、支払いを先に延ばす取引の理解として残ります。
この単元の確認問題
答えを見る前に、まず自分の言葉で答えてみてください。言葉にできないところが、そのまま本試験で止まるところです。
Q. 約束手形の振出人と名宛人は、それぞれお金を払う側と受け取る側のどちらですか。
A. 振出人が払う側、名宛人が受け取る側です。
「振り出す」という言葉が、お金を出す側を指しているからです。ここを逆に覚えると、仕訳の借方と貸方がすべて反対になります。
Q. 売掛金250,000円について、得意先から約束手形を受け取りました。仕訳を書いてください。
A. (借) 受取手形 250,000 / (貸) 売掛金 250,000 です。
資産が資産に振り替わるだけで、金額は変わりません。回収したのではなく、回収の形が変わっただけです。ここで現金や当座預金を借方に書いてしまう間違いが多い場所です。
Q. 満期日に手形が決済されたとき、動く資産は何ですか。
A. 当座預金です。手形は銀行を通じて決済されるため、現金ではなく当座預金が増減します。
手形と当座預金がセットで動くという流れをつかんでおくと、決済の仕訳で迷わなくなります。
【手形】約束手形は、読んで分かることと、本番で点になることが別です。点にするための材料はこちらにまとめてあります。
- この単元の確認問題 あと3問
- この単元の問題 10問(どこをどう間違えたかまで解説)
- この単元のひっかけ(本試験がどう引っかけてくるか)
- 財務諸表ラボ(切った仕訳が貸借対照表と損益計算書のどこに現れるかを画面で追う)
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- 間違えた問題だけを自動で拾い直す復習リスト
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