貸倒れの処理
貸倒れとは、売掛金などの債権が回収不能になることです。処理はその債権がいつ発生したかで分かれます。当期に発生した債権が貸し倒れた場合は、備えがないため全額を貸倒損失という費用にします。
売掛金が回収不能になったときの仕訳を書けるようになります。前期に発生した債権と当期に発生した債権で処理が変わる理由を説明できるようになります。引当金が足りないときの処理と、貸倒処理した債権が後から回収されたときの処理ができるようになります。
貸倒れは第1問で頻出です。ややこしいのは、同じ「売掛金が回収できなくなった」という出来事なのに、その売掛金がいつ発生したかで仕訳が変わる点です。理由は決算整理で設定する貸倒引当金(単元16)にあります。引当金が何のために積まれているのかが分かれば、分岐は自然に見えてきます。
貸倒れとは、回収できなくなること
売掛金は、あとでお金をもらう権利です。しかし相手が倒産すれば、その権利は価値を失います。これを貸倒れといいます。
回収できないと分かった以上、売掛金という資産を帳簿に残しておくことはできません。消します。
このとき、消えた金額をどう処理するかが問題になります。答えは2通りあり、その売掛金がいつ発生したかで分かれます。
| 売掛金の発生時期 | 処理 |
|---|---|
| 当期に発生した | 全額を貸倒損失(費用) |
| 前期以前に発生した | まず貸倒引当金を取り崩す |
この単元で使う金額は、設例のミナタカ商事には出てこない説明用の数字です。ミナタカ商事は設立初年度で、貸倒れがまだ起きていないためです。金額は1,000円単位の丸い数字にしてあります。
当期に発生した売掛金が貸し倒れたとき
当期に売り上げて生まれた売掛金が、その年のうちに回収不能になった場合は、貸倒損失という費用で処理します。
当期に発生した売掛金30,000円が貸し倒れた
(借) 貸倒損失 30,000 / (貸) 売掛金 30,000
引当金は使いません。理由ははっきりしています。貸倒引当金は前期末に、前期末時点の売掛金を見て積んだものだからです。当期に生まれた売掛金の分は、そこに含まれていません。
ミナタカ商事を例にすると分かりやすくなります。設例では期末の売掛金400,000円に対して2%の8,000円を引き当てました。この8,000円は、その時点で残っていた400,000円に備えたお金です。翌期に新しく生まれる売掛金のためのものではありません。
だから、当期に生まれて当期に倒れたものは、備えのない損失として全額を費用にします。
前期以前に発生した売掛金が貸し倒れたとき
前期末の時点で残っていた売掛金が貸し倒れた場合は、そのために積んでおいた貸倒引当金を取り崩します。
前期に発生した売掛金5,000円が貸し倒れた(貸倒引当金の残高は8,000円)
(借) 貸倒引当金 5,000 / (貸) 売掛金 5,000
費用は出ません。前期のうちに貸倒引当金繰入という費用として計上済みだからです。ここでもう一度費用にすると、同じ損失を2回計上することになります。
貸倒引当金は貸方にある科目なので、取り崩すときは借方に書きます。減価償却累計額と同じ動き方です。
引当金が足りないとき
貸し倒れた金額が引当金の残高を超えることもあります。この場合、引当金を使い切ってから、超えた分だけを貸倒損失にします。
前期に発生した売掛金12,000円が貸し倒れた(貸倒引当金の残高は8,000円)
(借) 貸倒引当金 8,000 / (貸) 売掛金 12,000 (借) 貸倒損失 4,000 /
引当金は見積もりなので、実際の貸倒れが見積もりを上回ることがあります。そのときは足りない分を当期の損失として受け止めます。
引当金の残高より多く取り崩して、貸倒引当金を借方残高にしてしまう間違いに注意してください。引当金はマイナスにはなりません。
貸倒処理した債権が、あとから回収されたとき
回収不能として処理した売掛金が、翌期以降に回収されることがあります。相手の資産整理が進んで一部が戻ってくる、といった場合です。
このとき、売掛金を復活させることはしません。すでに帳簿から消してあるからです。代わりに償却債権取立益という収益で受けます。
前期に貸倒処理した売掛金のうち3,000円を現金で回収した
(借) 現金 3,000 / (貸) 償却債権取立益 3,000
名前が長いのですが、「償却した(=消した)債権を取り立てたことによる利益」という、そのままの意味です。
なぜ収益なのかというと、帳簿上ゼロだったものからお金が入ってきたからです。売掛金という資産はもう存在しないので、減らすものがありません。相手科目がない入金は、収益になります。
同じ期の中で貸倒処理と回収が起きた場合は、貸倒れの仕訳を取り消す形で処理することもありますが、3級で問われるのは前期分の回収です。問題文の「前期に貸倒れとして処理した」という一言が合図になります。
この単元の確認問題
答えを見る前に、まず自分の言葉で答えてみてください。言葉にできないところが、そのまま本試験で止まるところです。
Q. 貸倒れが起きたとき、売掛金はどうなりますか。
A. 回収できる見込みがなくなったので、貸方に書いて消します。
資産は将来お金になる権利だからです。ならないと分かったものを資産に残しておくと、貸借対照表が実態より良く見えてしまいます。
Q. 当期に売り上げた売掛金が当期中に貸し倒れました。貸倒引当金を取り崩しますか。
A. 取り崩しません。全額を貸倒損失として費用処理します。
貸倒引当金は前期末の売掛金に対して積んだものだからです。当期に発生した債権には備えがないため、そのまま損失になります。
Q. 前期発生の売掛金12,000円が貸し倒れ、貸倒引当金の残高が8,000円しかありません。どう処理しますか。
A. 貸倒引当金8,000円を全額取り崩し、不足する4,000円を貸倒損失とします。
引当金はあくまで見積額だからです。足りない分まで引当金で消そうとすると、引当金がマイナス残高という存在しない状態になります。
貸倒れの処理は、読んで分かることと、本番で点になることが別です。点にするための材料はこちらにまとめてあります。
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