商品有高帳
商品有高帳は、商品の種類ごとに原価で出入りを追う補助簿です。受入・払出・残高の3ブロック、それぞれ数量・単価・金額の9列でできています。売価は登場しません。
商品有高帳の9列の様式を読めるようになります。先入先出法と移動平均法で払出単価を計算し、記入できるようになります。返品があったときの記入と、月末の締切ができるようになります。売上総利益を算定できるようになります。
第2問で商品有高帳を書かせる出題は定番です。三分法で仕訳を切っているだけでは、仕入勘定に原価の合計が積み上がるだけで、いま倉庫にいくらの商品が残っているのかは分かりません。それを商品ごとに追いかけるのが商品有高帳です。計算方法が2つあり、どちらを使うかで売上原価も利益も変わります。ここは手を動かさないと身につかない単元です。
仕入勘定だけでは、いくら残っているか分かりません
三分法では、商品を仕入れたら仕入勘定の借方に原価を積み上げ、売ったら売上勘定の貸方に売価を積み上げます。この方法は仕訳が単純で速いのですが、期中はずっといくらの商品が倉庫に残っているかが分からないという弱点があります。仕入勘定の残高は「今期に買った合計」であって、「いま残っている分」ではないからです。
そこで、商品の種類ごとに、入ってきた分と出ていった分を数量と単価で記録していく帳簿を別に作ります。これが商品有高帳です。
重要な点が1つあります。商品有高帳に書く金額は、すべて原価です。売価は一切出てきません。100円で仕入れたものを150円で売ったなら、有高帳の払出欄に書くのは100円のほうです。売価の150円は売上勘定の話であって、倉庫から出ていった商品の値打ちではありません。
ここを混ぜてしまうと、以降の計算がすべて狂います。有高帳は原価だけの世界と覚えてください。
9列の様式を読む
商品有高帳の様式は、日付と摘要のあとに受入・払出・残高の3つのブロックが並び、それぞれが数量・単価・金額の3列に分かれます。3×3で9列です。
| 日付 | 摘要 | 受入 数量 | 受入 単価 | 受入 金額 | 払出 数量 | 払出 単価 | 払出 金額 | 残高 数量 | 残高 単価 | 残高 金額 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 4/1 | 前月繰越 | 100 | 200 | 20,000 | 100 | 200 | 20,000 |
見方は次のとおりです。
- 受入……商品が入ってきたとき。仕入がこれにあたります
- 払出……商品が出ていったとき。売上がこれにあたります
- 残高……その取引が終わった時点で倉庫にある分
1行書くたびに、必ず残高欄まで書きます。残高を空欄のまま次の行にいくと、あとで必ず分からなくなります。
この単元で使う数量と単価は、設例のミナタカ商事とは別の説明用のデータです。商品有高帳は1個いくらという単価がないと書けない帳簿なので、ここだけは1,000円単位ではない数字を使います。単価は200円・230円・260円のように丸めてあります。
先入先出法は、古いものから出ていったことにします
先入先出法は、先に仕入れたものから先に売れていったと考える方法です。実際にどれが売れたかは分かりませんが、そう仮定して払出単価を決めます。
次のデータで書いてみます。商品はA4ノート1種類です。
4/1 前月繰越 100個 @200 4/8 仕入 200個 @230 4/15 売上 250個 4/22 仕入 150個 @260 4/28 売上 100個
4/8の仕入のあと、倉庫には単価の違う2つのかたまりがあります。@200が100個と、@230が200個です。先入先出法では、この2つを混ぜずに、そのまま上下に並べて書きます。残高欄が2行になります。
4/15に250個売れました。古いほうから出すので、@200の100個を全部出し、足りない150個を@230から出します。
払出 = 100個 × @200 = 20,000
+ 150個 × @230 = 34,500
------
54,500払出欄も2行になります。残った@230の50個(11,500円)が残高です。
4/22に@260を150個仕入れると、残高は@230が50個と@260が150個の2かたまりです。4/28に100個売れたら、また古いほうから出します。
払出 = 50個 × @230 = 11,500
+ 50個 × @260 = 13,000
------
24,500残高は@260が100個で26,000円です。
受入合計 105,000円 − 払出合計 79,000円 = 残高 26,000円。この検算は必ずやってください。
移動平均法は、仕入れるたびに平均をとり直します
移動平均法は、商品を仕入れるたびに、そのときの在庫全部を混ぜて平均単価を計算し直す方法です。かたまりに分けず、いつでも残高は1行になります。
平均単価の出し方はいつも同じです。
平均単価 = (それまでの残高金額 + 今回の受入金額)÷(それまでの残高数量 + 今回の受入数量)
先ほどと同じデータでやってみます。
4/8の仕入のあと
(20,000 + 46,000) ÷ (100個 + 200個) = 66,000 ÷ 300個 = @220
残高は300個・@220・66,000円の1行です。
4/15の売上(250個)
払出単価はいまの平均@220です。250個 × @220 = 55,000円。残高は50個・@220・11,000円になります。
4/22の仕入のあと
(11,000 + 39,000) ÷ (50個 + 150個) = 50,000 ÷ 200個 = @250
4/28の売上(100個)
100個 × @250 = 25,000円。残高は100個・@250・25,000円です。
受入合計105,000円 − 払出合計80,000円 = 25,000円。合います。
平均単価を計算し直すのは仕入れたときだけです。売ったときは平均は変わりません。ここを間違えて売上のたびに割り算をする人が多いのですが、商品が出ていっても残った商品の値打ちは変わらないので、平均は動きません。
返品があったときの記入
返品は、商品が実際にどちら向きに動いたかで書く欄が決まります。
仕入れた商品を返品した(仕入戻し)
商品は倉庫から出ていきます。したがって払出欄に書きます。このとき使う単価は、その商品を仕入れたときの単価です。先入先出法でも、古いものから出すのではなく、返す商品そのものの単価を使います。返品は販売ではないからです。
売った商品が返ってきた(売上戻り)
商品は倉庫に戻ってきます。したがって受入欄に書きます。単価は、その商品を払い出したときの単価です。新しく仕入れたわけではないので、そのとき有高帳に書いた払出単価をそのまま戻します。移動平均法の場合も、この受入では平均単価を計算し直しません。出したものが戻ってきただけだからです。
迷ったら、現物が倉庫から出るなら払出、倉庫に入るなら受入と考えてください。仕入と売上のどちらの取引かで決めようとすると逆になります。
売上総利益を出す
第2問では、有高帳を書かせたうえで、その月の売上高・売上原価・売上総利益を答えさせることがあります。
- 売上高……売った数量 × 売価。売価は問題文に別に書かれています。有高帳の中には出てきません
- 売上原価……有高帳の払出欄の金額の合計
- 売上総利益……売上高 − 売上原価
先ほどのデータで、売価が@400だったとします。売った数量は250個と100個で合計350個なので、売上高は140,000円です。
| 先入先出法 | 移動平均法 | |
|---|---|---|
| 売上高 | 140,000 | 140,000 |
| 売上原価(払出合計) | 79,000 | 80,000 |
| 売上総利益 | 61,000 | 60,000 |
| 月末残高 | 26,000 | 25,000 |
同じ取引なのに、利益が1,000円違います。どちらかが間違っているわけではありません。残った在庫にいくらの値打ちを付けるかが違うので、その裏返しで原価が変わるというだけです。単価が上がっていく局面では、先入先出法のほうが古い安い単価から先に費用になるため、原価が小さく利益が大きく出ます。
売上原価を有高帳から拾うときは、必ず払出欄だけを見てください。受入欄の合計を足してしまう間違いが起きやすい場所です。
帳簿を締め切る
月末には帳簿を締め切ります。手順は決まっています。
- 最終行の残高(数量・単価・金額)を、払出欄に「次月繰越」として書く
- 受入欄と払出欄の数量・金額をそれぞれ合計する
- 受入合計と払出合計が一致することを確認して、二重線を引く
- 翌月の1行目に「前月繰越」として、同じ金額を受入欄に書く
先ほどの先入先出法の例なら、次月繰越として払出欄に100個・@260・26,000円を書きます。すると受入合計も払出合計も105,000円になり、一致します。
なぜ残高を払出欄に書くのかというと、締め切ったときに左右を釣り合わせるためです。倉庫から実際に出ていったわけではないのに払出欄に書くので違和感がありますが、これは帳簿を閉じるための操作だと割り切ってください。貸借対照表の当期純利益を貸方に書くのと同じ発想です。
残高が複数行ある先入先出法では、次月繰越も単価ごとに分けて書きます。
この単元の確認問題
答えを見る前に、まず自分の言葉で答えてみてください。言葉にできないところが、そのまま本試験で止まるところです。
Q. 商品有高帳の払出欄には、売価と原価のどちらを書きますか。
A. 原価です。商品有高帳には売価は一切登場しません。
有高帳は「倉庫にある商品の値打ち」を追う帳簿だからです。売価を書いてしまうと、残高欄の金額が実際の在庫の原価と合わなくなります。
Q. 商品有高帳の受入・払出・残高は、それぞれ何を表しますか。
A. 受入は入ってきた商品、払出は出ていった商品、残高はその時点で倉庫にある商品です。それぞれ数量・単価・金額の3列を持ちます。
3ブロック×3列という構造をつかんでおくと、問題用紙の表がどんなに大きくても、書く場所を迷わなくなります。
Q. 先入先出法で、残高に単価の違う商品が2種類あるとき、有高帳の残高欄はどう書きますか。
A. 1行にまとめず、単価ごとに2行に分けて書きます。金額を平均したりはしません。
先入先出法は「古い順に出す」という方法なので、どのかたまりがいくらで何個残っているかを常に分けて持っておかないと、次の払出単価が決められないからです。
商品有高帳は、読んで分かることと、本番で点になることが別です。点にするための材料はこちらにまとめてあります。
- この単元の確認問題 あと4問
- この単元の問題 20問(どこをどう間違えたかまで解説)
- この単元のひっかけ(本試験がどう引っかけてくるか)
- 財務諸表ラボ(切った仕訳が貸借対照表と損益計算書のどこに現れるかを画面で追う)
- この単元をそのまま簿記専用AIチューターに質問できます
- 間違えた問題だけを自動で拾い直す復習リスト
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