売掛金・買掛金と債権債務
掛けは代金を後で払う約束で、売る側は売掛金(資産)、買う側は買掛金(負債)で記録します。掛け取引は計上と決済の2回に分かれ、決済時に売上や仕入を再計上してはいけません。
掛けで売ったとき・仕入れたとき、そして代金を回収したとき・支払ったときの仕訳を切れるようになります。売掛金元帳と総勘定元帳の関係を説明できるようになります。電子記録債権・電子記録債務の仕訳を切れるようになります。売掛金と未収入金、買掛金と未払金を正しく使い分けられるようになります。
第1問の仕訳で、掛け取引はほぼ毎回出ます。また第2問では売掛金元帳・買掛金元帳の記入や、補助簿の選択問題として問われます。使い分けの基準を1つ覚えるだけで解ける論点が多いので、投資効率の高い単元です。
掛けとは、代金を後で払う約束のことです
会社どうしの取引では、商品を渡したその場で現金をやりとりすることはあまりありません。ふつうは「今月の分をまとめて来月末に払う」という約束をします。この後払いの約束を掛けと呼びます。
掛けで売ったとき、代金を受け取る権利が生まれます。この権利を売掛金という勘定科目で記録します。売掛金は資産です。
掛けで仕入れたとき、代金を払う義務が生まれます。この義務を買掛金という勘定科目で記録します。買掛金は負債です。
大事なのは、掛け取引は必ず2回に分かれるということです。
- 商品を渡した(受け取った)とき … 売上・仕入と、売掛金・買掛金を計上する
- 代金を受け取った(払った)とき … 売掛金・買掛金を消す
2回目のときに、もう一度売上や仕入を書いてはいけません。売ったのは1回だけだからです。ここが掛け取引でいちばん多い誤りです。
売掛金の発生と回収
ミナタカ商事の実際の取引で確認します。
×1年6月15日 商品を1,400,000円で売り上げ、代金は掛けとした。
(借) 売掛金 1,400,000 / (貸) 売上 1,400,000
商品を渡したので売上(収益)が発生します。収益の定位置は貸方なので、貸方に1,400,000円。相手側は代金を受け取る権利、つまり売掛金(資産)です。資産が増えたので借方に書きます。
×1年7月31日 売掛金1,000,000円を当座預金で回収した。
(借) 当座預金 1,000,000 / (貸) 売掛金 1,000,000
当座預金(資産)が増えたので借方。売掛金(資産)が減ったので、定位置とは反対の貸方に書きます。ここで売上は登場しません。
この時点で売掛金の残高は、1,400,000 − 1,000,000 = 400,000円です。この400,000円が、決算日までそのまま残り、期末の貸借対照表に載ることになります。
買掛金の発生と支払
買う側も同じ形です。借方と貸方が入れ替わるだけだと考えてください。
×1年5月20日 商品800,000円を仕入れ、代金は掛けとした。
(借) 仕入 800,000 / (貸) 買掛金 800,000
仕入(費用)の定位置は借方です。相手側は代金を払う義務、つまり買掛金(負債)で、負債の定位置は貸方です。
×1年8月31日 買掛金600,000円を当座預金から支払った。
(借) 買掛金 600,000 / (貸) 当座預金 600,000
買掛金(負債)が減ったので、定位置と反対の借方に書きます。当座預金(資産)が減ったので貸方です。
買掛金の残高は、800,000 − 600,000 = 200,000円です。
売掛金と買掛金の関係を表にすると、次のようになります。
| 発生したとき | 決済したとき | |
|---|---|---|
| 売掛金(資産) | 借方に計上 | 貸方で消す |
| 買掛金(負債) | 貸方に計上 | 借方で消す |
得意先ごとの内訳は、売掛金元帳で管理します
総勘定元帳の売掛金勘定を見れば、会社全体の売掛金残高は分かります。しかし「A社にいくら、B社にいくら」という内訳は分かりません。実務では請求も回収も相手ごとに行うので、この内訳が必要です。
そこで、得意先ごとにページを分けた帳簿を別に作ります。これを売掛金元帳(得意先元帳)と呼びます。仕入先ごとの内訳を管理するものは買掛金元帳(仕入先元帳)です。
これらは総勘定元帳の補助として作るので、補助元帳と呼ばれます。そして補助元帳をまとめる立場にある総勘定元帳の売掛金勘定を、統制勘定と呼びます。
重要な性質が1つあります。
補助元帳の全ページの残高合計は、総勘定元帳の統制勘定の残高と必ず一致します。
同じ取引を、まとめた形と相手別の形で二重に記録しているだけだからです。一致しなければ、どちらかに記入漏れか金額違いがあります。第2問では、この一致を使って空欄を埋めさせる問題が出ます。
なお、得意先の会社名をそのまま勘定科目にすることもあります(「東京商店」「大阪商事」など)。これを人名勘定と呼びます。人名勘定を使う場合は、売掛金勘定を使わずに、直接その会社名の勘定で記録します。
電子記録債権・電子記録債務
掛けの代金を、電子債権記録機関に登録して管理する仕組みがあります。登録された債権を電子記録債権、債務を電子記録債務と呼びます。
売掛金や買掛金が、登録によってこの科目に姿を変える、と考えてください。処理は3段階です。
① 発生(登録)したとき
売掛金600,000円について電子記録債権の発生記録を行ったとします(設例外の金額です。ミナタカ商事はこの取引を行っていないため、説明用に丸い数字を置いています)。
(借) 電子記録債権 600,000 / (貸) 売掛金 600,000
買う側は逆です。
(借) 買掛金 600,000 / (貸) 電子記録債務 600,000
② 決済されたとき
(借) 当座預金 600,000 / (貸) 電子記録債権 600,000
(借) 電子記録債務 600,000 / (貸) 当座預金 600,000
電子記録債権は資産、電子記録債務は負債です。売掛金・買掛金とまったく同じ動き方をします。違うのは名前だけだと思って構いません。
この仕組みは、かつて手形が果たしていた役割を置き換えるものとして広がりました。2027年4月1日以降、手形は3級の出題範囲から外れますが、電子記録債権・電子記録債務は残ります。この教材で電子記録債権を手形とは別の単元に置いているのは、そのためです。
未収入金と未払金 ― 商品売買から生じたかどうかで分かれます
後払いの取引がすべて売掛金・買掛金になるわけではありません。分岐の条件は1つだけです。
その取引が、会社の本業である商品売買から生じたものかどうか。
| 商品売買から生じた | 商品売買以外から生じた | |
|---|---|---|
| 受け取る権利 | 売掛金 | 未収入金 |
| 支払う義務 | 買掛金 | 未払金 |
ミナタカ商事は文房具の卸売会社です。文房具を掛けで売れば売掛金、文房具を掛けで仕入れれば買掛金になります。
一方、使っていた備品を売って代金を後で受け取ることになった場合、それは商品売買ではないので未収入金です。事務用のパソコンを買って代金を後で払う場合も、商品ではないので未払金です。
同じ「文房具」でも、卸売のために仕入れたものは商品、自社で使うために買ったものは消耗品です。何を売っている会社なのかを問題文で確認してから判断してください。
未収入金は資産、未払金は負債です。動き方は売掛金・買掛金と同じです。
貸付金・借入金とは何が違うのか
後払いの科目には、もう1組あります。貸付金と借入金です。
これらは、商品や備品のやりとりではなく、お金そのものを貸し借りしたときに使います。
| 何が起きたか | 使う科目 |
|---|---|
| 商品を売って代金は後で | 売掛金 |
| 商品以外を売って代金は後で | 未収入金 |
| お金を貸した | 貸付金 |
| 商品を仕入れて代金は後で | 買掛金 |
| 商品以外を買って代金は後で | 未払金 |
| お金を借りた | 借入金 |
ミナタカ商事は×1年4月1日に銀行から500,000円を借りています。
(借) 当座預金 500,000 / (貸) 借入金 500,000
お金を借りただけなので、売上も仕入も関係ありません。借入金は負債です。
貸付金・借入金には、売掛金・買掛金にはない特徴があります。利息がつくことです。ミナタカ商事の借入金は年2%なので、1年で10,000円の利息が発生します。この利息の計算と決算での扱いは、単元13と単元33で扱います。
この単元の確認問題
答えを見る前に、まず自分の言葉で答えてみてください。言葉にできないところが、そのまま本試験で止まるところです。
Q. 掛けで売った商品の代金を、後日現金で受け取りました。このとき売上を計上しますか。
A. 計上しません。売上はすでに商品を渡した時点で計上済みです。受け取ったときは売掛金を減らすだけです。
売上を2回計上すると、売上高も利益も2倍に膨らみます。掛け取引は「売上の計上」と「お金の回収」が別の日に起きているだけだと考えてください。
Q. ミナタカ商事の×2年3月31日時点の売掛金残高はいくらですか。
A. 400,000円です。6月15日に発生した1,400,000円から、7月31日に回収した1,000,000円を差し引いた残りです。
この400,000円は、単元16の貸倒引当金(400,000×2%=8,000円)の計算のもとになる金額です。期中の掛け取引の記録が、そのまま決算整理の入力データになっています。
Q. 買掛金200,000円を現金で支払ったときの仕訳を切ってください。
A. (借) 買掛金 200,000 / (貸) 現金 200,000
買掛金は負債なので定位置は貸方です。義務を果たして消えるときは、反対側の借方に書きます。支払いの手段が当座預金でも現金でも、買掛金側の書き方は変わりません。
売掛金・買掛金と債権債務は、読んで分かることと、本番で点になることが別です。点にするための材料はこちらにまとめてあります。
- この単元の確認問題 あと4問
- この単元の問題 27問(どこをどう間違えたかまで解説)
- この単元のひっかけ 5件(本試験がどう引っかけてくるか)
- 財務諸表ラボ(切った仕訳が貸借対照表と損益計算書のどこに現れるかを画面で追う)
- この単元をそのまま簿記専用AIチューターに質問できます
- 間違えた問題だけを自動で拾い直す復習リスト
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