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商品売買の基本(三分法)

簿記3級 無料テキスト 単元05/第2章 商品売買 ― 3級の主役/重要度 ★★★★★/出題箇所 第1問・第2問・第3問/読む目安 50分 登録不要で読めます

ここだけ読めば

三分法は、期中の記帳を軽くするために、原価の計算を決算に1回だけまとめる方法です。 仕入(費用)は買った金額、売上(収益)は売った金額を記録し、繰越商品(資産)は決算でしか動きません。

この単元を読み終えるとできること

商品を仕入れたとき・売ったときの仕訳を、掛けでも現金でも当座預金でも自分で切れるようになります。仕入・売上・繰越商品の3つの勘定が、それぞれいつ動いていつ動かないのかを説明できるようになります。返品が「最初の仕訳の取り消し」であることを理解し、逆仕訳を自分で書けるようになります。

なぜこの順番でここに置いているか

商品売買は3級で最も出題量の多い論点です。第1問の仕訳では毎回のように問われ、第2問の補助簿も、第3問の売上原価の算定も、すべてこの単元の三分法が前提になっています。3つの勘定の役割をここで取り違えたまま進むと、決算整理でつまずきます。

商品を売った瞬間、2つのことが同時に起きています

文房具の卸売をしているミナタカ商事が、800,000円で仕入れた商品を1,400,000円で売ったとします。このとき会社の中では、2つのことが同時に起きています。1つは、代金1,400,000円を受け取る権利が増えたこと。もう1つは、持っていた商品が手元から出ていったことです。

このうち「もうけ」を取引1件ごとに帳簿へ残そうとすると、売るたびに「いま売ったこの商品は、いくらで仕入れたのか」を調べなければなりません。文房具の卸売なら、1日に何十件も出荷があります。ボールペン1本ごとに仕入値をさかのぼって確認し、売値との差額を計算してから仕訳を切ることになります。記録を1件残すために払うコストとしては、割に合いません。

そこで簿記は、期中は原価を調べないという割り切りをします。仕入れたときは仕入れた金額だけ、売ったときは売った金額だけを記録しておいて、原価ともうけの計算は決算のときに1回だけまとめて行います。この割り切りを勘定科目の形にしたものが、三分法です。

商品売買の記帳方法は三分法のほかにもあります。どれを使っても、1年が終わったときに出てくる利益は同じです。違うのは、期中にどれだけ手間をかけるか、そのかわり期中にどこまで細かいことがわかるか、という点だけです。三分法は「期中の手間を軽くする代わりに、決算で1回だけまとめて計算する」を選んだ方法だと理解してください。

3級の試験では、問題文に断りがなければ三分法で処理します。第1問の仕訳問題も、第3問の決算問題も、前提は三分法です。ですから、まずこの1つの方法を、考えなくても手が動くところまで持っていくのが最短の道になります。

商品売買の記帳には3つのやり方があります

三分法の3つの箱と、それぞれが動くタイミング

三分法は、商品売買を仕入売上繰越商品の3つの勘定に分けて記録する方法です。名前のとおり、3つに分けるから三分法です。

大事なのは3つ目です。繰越商品は、期中は一切動きません。 仕入れたときも売ったときも動きません。決算日に売れ残りを数えたときだけ動きます。ミナタカ商事の1年分の取引を最初から最後まで見ても、繰越商品が出てくるのは3月31日の決算整理の1回だけです。

もう1つ引っかかりやすいのが、仕入が費用だという点です。仕入れた商品は倉庫にある「物」ですから、資産のように思えます。それでも三分法は、買った時点でいったん全額を費用として記録します。そして決算で、売れ残っている分だけを資産に戻します。この「いったん全部費用にして、あとで残りを戻す」という順番が、後半で出てくる売上原価の計算にそのままつながっていきます。

3つの勘定が最後にどこへ行くのかも、先に見ておくと迷いません。仕入と売上は費用と収益なので、損益計算書に載ります。繰越商品は資産なので、貸借対照表に載ります。つまり三分法は、1つの商品売買という出来事を、損益計算書に載る部分と貸借対照表に載る部分に、決算で仕分ける仕組みでもあります。

三分法の3つの勘定には、それぞれ役割があります

仕入れたときの仕訳(ミナタカ商事 5月20日)

ミナタカ商事は5月20日に、商品800,000円を仕入れ、代金は掛けとしました。

仕入れた金額800,000円を、仕入勘定の借方に書きます。費用が増えたので借方です。代金はまだ払っていませんから、あとで払う義務が800,000円増えています。買掛金は負債なので、増加は貸方です。

(借)仕入 800,000 /(貸)買掛金 800,000

代金の払い方が変わっても、借方は変わりません。現金で払ったなら貸方が現金に、当座預金から払ったなら貸方が当座預金になるだけです。

(借)仕入 800,000 /(貸)現金 800,000 ← 現金で払った場合

仕入勘定に書く金額は、商品の代金そのものです。三分法では、仕入れた瞬間に「これはいくらで売れるだろうか」を考える必要がありません。払った金額をそのまま書けば終わりです。

なお、実際に払ったのは8月31日で、このときミナタカ商事は買掛金600,000円を当座預金から支払っています。仕訳は(借)買掛金 600,000 /(貸)当座預金 600,000 です。支払いのときに仕入をもう一度書くことはありません。仕入を記録するのは、商品を受け取った5月20日の1回だけです。

売ったときの仕訳(ミナタカ商事 6月15日)

6月15日、ミナタカ商事は商品を1,400,000円で売り上げ、代金は掛けとしました。

(借)売掛金 1,400,000 /(貸)売上 1,400,000

売上勘定に書くのは、売った金額(売価)です。仕入値の800,000円ではありません。ここで「もうけはいくらだろう」と考え始めると手が止まります。三分法では、売った瞬間に記録するのは売価だけだと決まっています。

借方は、代金を受け取る権利が増えたので売掛金です。売掛金は資産なので、増加は借方に書きます。現金で受け取ったなら借方が現金になります。

7月31日には、この売掛金のうち1,000,000円を当座預金で回収しています。

(借)当座預金 1,000,000 /(貸)売掛金 1,000,000

回収のときに売上は動きません。売上を計上するのは、商品を引き渡した6月15日の1回だけです。ここでもう一度売上を書いてしまうと、実際には1回しか売っていないのに売上が二重に立ちます。売上が立つのは商品を渡した日、入金は権利が現金や預金に姿を変えただけ、と切り分けてください。

売上をいつ計上するのかも決まっています。代金を受け取った日ではなく、商品を引き渡した日です。ミナタカ商事の場合、6月15日に商品を出荷して相手に渡しているので、その日が売上の日になります。7月31日に入金があっても、それは売上の日ではありません。

この時点で、仕入の800,000円と売上の1,400,000円は、帳簿の上ではまだつながっていません。仕入勘定には800,000円、売上勘定には1,400,000円が、それぞればらばらに積み上がっているだけです。つながるのは決算です。

返品は、最初の仕訳を左右そのまま入れ替えて書きます

仕入れた商品に不良があって返したものを仕入戻し、売った商品が返ってきたものを売上戻りといいます。どちらも、最初に切った仕訳の借方と貸方をそっくり入れ替えて書きます。

ミナタカ商事は初年度に返品をしていないため、この節だけは設例の外の数字を使います。仕訳の形を見るためだけの金額です。

仕入れた商品のうち30,000円分を返品し、掛け代金から差し引いた場合

(借)買掛金 30,000 /(貸)仕入 30,000

売った商品のうち50,000円分が返品され、掛け代金から差し引いた場合

(借)売上 50,000 /(貸)売掛金 50,000

返品を「新しい取引」として仕入や売上に足してしまうと、仕入高も売上高も実際より膨らみます。返品は取り消しなので、減らす側に書くと覚えてください。仕入戻しがあれば仕入勘定の残高はその分だけ減り、売上戻りがあれば売上勘定の残高がその分だけ減ります。

減らす側がどちらかは、暗記しなくても出せます。仕入は借方に増えていく費用ですから、減らすには貸方に書きます。売上は貸方に増えていく収益ですから、減らすには借方に書きます。定位置の反対側が減らす側です。

返品は、元の仕訳をひっくり返すだけです

決算で何が起きるかは、単元32で扱います

ここまでで、期中の仕訳はひととおり切れるようになりました。ミナタカ商事の帳簿には、仕入に800,000円、売上に1,400,000円が積み上がっています。繰越商品はまだ一度も動いていません。

この状態のまま決算日を迎えると、困ったことが起きます。仕入800,000円は「当期に買った金額」であって、「当期に売れた商品の原価」ではありません。倉庫に売れ残りがあれば、その分はまだ費用になっていないはずです。この差を直すのが決算整理という手続きで、繰越商品が動くのはこのときの1回だけです。

具体的にいくらをどう振り替えるのか、その計算と仕訳は単元32で扱います。この単元で持ち帰るのは次の1点です。三分法の3つの箱のうち、仕入と売上は期中に動き続け、繰越商品は決算まで動かない。期中に繰越商品を触ったら、その仕訳は誤りです。

言い換えると、三分法は「原価の計算を決算まで先送りする方法」です。先送りしたぶんの後始末が決算整理であって、両者はもともと1組になっています。

【2027年度からの追加枠】もう一つの記帳方法が加わります

2027年4月1日以降に行われる試験から、三分法とは別の記帳方法が3級の出題範囲に加わります。売上原価対立法と呼ばれる方法です。

三分法は、期中は原価を記録せず、決算で1回だけまとめて売上原価を出す方法でした。売上原価対立法はその逆で、商品を売るたびに、売価の記録と原価の記録を2本立てで残します。売った瞬間に原価が確定するので、決算を待たなくても、いま帳簿上にいくらの在庫があり、いくら稼いでいるのかが読み取れます。この単元の最初に、原価を1件ずつ調べるのは手間がかかると書きました。その手間を、いまはコンピュータの在庫管理が肩代わりできるようになったため、実務で広く使われるようになった方法です。

使う勘定科目と具体的な仕訳は、出題範囲の確定に合わせてこの単元に1節を追加します。いま押さえておくことは1つだけです。同じ商品売買でも、記帳方法が変われば使う勘定科目が変わります。 三分法で仕入に入れていた金額が、別の方法では別の科目に入る、ということです。逆に言えば、方法を1つ決めれば、その方法の中では処理は一本道です。2026年度までの試験は三分法だけで解けますから、まずは三分法を手に馴染ませてください。

実務現場から

実務のシステムも、日々は仕入を使い、決算で在庫を確定させてから商品に振り替えます。学習と同じ順番なので、監査を受ける会社ではこの仕組みを知っているだけで仕事が進めやすくなります。

この単元の確認問題

答えを見る前に、まず自分の言葉で答えてみてください。言葉にできないところが、そのまま本試験で止まるところです。

Q. 商品を売るたびにその商品の仕入値を1件ずつ調べる方法には、どんな不都合がありますか。1文で答えてください。

A. 売上が起きるたびに仕入値をさかのぼって調べる手間がかかり、取引件数が多い会社では記帳が追いつきません。

簿記の方法は、正しいかどうかだけでなく、毎日続けられるかどうかで選ばれています。三分法は期中の手間を減らすために、原価の計算を決算の1回にまとめた方法です。だから期中は原価を記録しません。

Q. 5月20日に商品を仕入れ、6月15日にその商品を売りました。この2つの取引で、繰越商品勘定は何回動きますか。

A. 0回です。

繰越商品が動くのは決算のときだけです。期中の仕入では仕入勘定、期中の売上では売上勘定しか動きません。仕入のたびに繰越商品を動かしてしまうのが、三分法でいちばん多い誤りです。

Q. ミナタカ商事が同じ商品800,000円を、掛けではなく当座預金から支払って仕入れたとしたら、仕訳はどうなりますか。

A. (借)仕入 800,000 /(貸)当座預金 800,000

借方は「何を手に入れたか」で決まり、貸方は「何で払ったか」で決まります。手に入れたものは同じ商品なので、仕入800,000円は動きません。変わるのは貸方の科目だけです。

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商品売買の基本(三分法)は、読んで分かることと、本番で点になることが別です。点にするための材料はこちらにまとめてあります。

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