現金と現金過不足
簿記でいう現金には、紙幣・硬貨のほかに、銀行へ持ち込めばすぐ換金できる通貨代用証券が含まれます。他人振出小切手・送金小切手・郵便為替証書などがこれにあたり、自己振出小切手や切手・印紙は含まれません。
簿記でいう現金に何が含まれるかを判断できるようになります。帳簿の現金残高と実際の残高がずれたときに、現金過不足を使って処理できるようになります。原因が判明したときの振替と、決算日まで判明しなかったときの雑損・雑益への振替ができるようになります。
第1問で通貨代用証券の判定が問われます。また現金過不足は、発生・判明・決算という3つの場面のどれを聞かれているかで答えが変わるため、仕組みを理解していないと当てずっぽうになります。決算時の処理は第3問でも問われます。
簿記でいう現金は、紙幣と硬貨だけではありません
日常の感覚では、現金といえば紙幣と硬貨です。しかし簿記では、それ以外にも現金として扱うものがあります。すぐに銀行へ持ち込んで換金できるものは、現金と同じ扱いにします。これらを通貨代用証券と呼びます。
現金に含まれるもの。
| もの | 説明 |
|---|---|
| 紙幣・硬貨 | そのまま通貨 |
| 他人振出小切手 | 他社が振り出した小切手。銀行に持ち込めばすぐ換金できる |
| 送金小切手 | 銀行が送金のために振り出した小切手 |
| 郵便為替証書 | 郵便局で換金できる証書 |
| 配当金領収証 | 株式の配当を受け取るための証書 |
| 期限到来後の公社債利札 | 利払日が来た利札 |
現金に含まれないもの。
| もの | 使う科目 |
|---|---|
| 自己振出小切手 | 当座預金(単元10) |
| 先日付小切手 | 受取手形(2027年3月まで) |
| 郵便切手・収入印紙 | 通信費・租税公課(未使用分は貯蔵品。単元22) |
| 借用証書 | 貸付金 |
分かれ目は、銀行へ持っていけばその場でお金になるかどうかです。切手や印紙は買った金額で換金してもらえないので、現金ではありません。
もっとも間違えやすいのが他人振出小切手です。小切手という言葉から当座預金を連想してしまいますが、他社が振り出した小切手を受け取った側にとっては、それは換金できる紙です。受け取ったら現金と覚えてください。
2027年4月1日以降について。紙の小切手が廃止されることに伴い、「小切手」は3級の出題区分表から消えます。ただし、他人振出小切手を現金として扱う処理をどうするかについて、日本商工会議所は現時点で何も示していません。それ以降に受験する方は、上の表のうち小切手に関する行は出題されない可能性が高いと考えておいてください。送金小切手・郵便為替証書・配当金領収証といった他の通貨代用証券の扱いは変わりません。
現金勘定の動き方
現金は資産なので、定位置は借方です。増えたら借方、減ったら貸方に書きます。
ミナタカ商事の1年間で、現金が動いた取引は4本だけでした。
| 日付 | 取引 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|---|
| 4/1 | 株主から出資を受けた | 現金 1,000,000 | 資本金 1,000,000 |
| 4/1 | 当座預金に預け入れた | 当座預金 800,000 | 現金 800,000 |
| 11/10 | 預かった所得税を納付した | 預り金 20,000 | 現金 20,000 |
| 12/20 | 通信費と水道光熱費を支払った | 通信費 36,000<br>水道光熱費 16,000 | 現金 52,000 |
現金勘定をT字勘定で見ると、こうなります。
現 金
─────────┬─────────
4/1 1,000,000 │ 4/1 800,000
│ 11/10 20,000
│ 12/20 52,000
│ 3/31 残 128,000借方合計1,000,000円に対し、貸方の支出が合計872,000円。差引128,000円が決算日の現金残高です。この128,000円が、期末の貸借対照表に現金として載ります。
会社の資金のほとんどは当座預金で動いていて、現金で動いているのはごく一部です。実際の会社もこの形です。
帳簿と実際がずれたとき ― 現金過不足
現金は、帳簿の残高と手元の実際の残高がずれることがあります。おつりを渡し間違えた、記録を忘れた、といった理由です。
このとき、まず帳簿を実際の残高に合わせます。実際にある金額のほうが真実だからです。そして、合わせるために生じた差額を現金過不足という科目でいったん受け止めます。
以下は、この処理を説明するための設例です。ミナタカ商事では現金過不足が発生していないため、丸い金額を置いています。
帳簿残高128,000円、実際有高125,000円だった(3,000円足りない)
帳簿の現金を3,000円減らして実際に合わせます。
(借) 現金過不足 3,000 / (貸) 現金 3,000
帳簿残高128,000円、実際有高130,000円だった(2,000円多い)
帳簿の現金を2,000円増やします。
(借) 現金 2,000 / (貸) 現金過不足 2,000
現金過不足は、資産でも負債でも収益でも費用でもありません。原因が分かるまで差額を預けておくための、仮の場所です。5要素のどれにも属さないので、この科目を貸借対照表や損益計算書に載せることはできません。決算日までに必ず空にします。
覚え方は単純です。現金を実際に合わせて、余った側に現金過不足を置く。これだけです。
原因が判明したら、本来の科目へ振り替えます
後日、原因が分かったら、現金過不足を本来あるべき科目に振り替えます。
先ほどの「3,000円足りない」ケースで、原因が「通信費3,000円の記録漏れ」だったとします。
(借) 通信費 3,000 / (貸) 現金過不足 3,000
借方にあった現金過不足3,000円が、貸方に同額書かれて消えます。そして本来立つべきだった通信費が借方に立ちます。結果として、記録漏れがなかった状態と同じになります。
「2,000円多い」ケースで、原因が「受取手数料2,000円の記録漏れ」だったとします。
(借) 現金過不足 2,000 / (貸) 受取手数料 2,000
貸方にあった現金過不足が、借方に書かれて消えます。
ポイントは、現金過不足が最初に立った側と反対側に書けば消えるということです。仮の場所に置いていたものを、本来の場所へ移しているだけです。
なお、原因が一部だけ判明することもあります。その場合は判明した分だけ振り替え、残りは現金過不足のまま残します。
決算日まで原因が分からなかったとき ― 雑損・雑益
決算日が来ても原因が分からないことがあります。それでも、現金過不足を貸借対照表に載せることはできません。仮の科目だからです。
そこで決算日に、残っている現金過不足を雑損または雑益へ振り替えます。
借方に現金過不足が残っている場合(現金が足りなかった側)
(借) 雑損 3,000 / (貸) 現金過不足 3,000
雑損は費用です。原因不明のまま失われたお金なので、費用として損益計算書に載せます。
貸方に現金過不足が残っている場合(現金が多かった側)
(借) 現金過不足 2,000 / (貸) 雑益 2,000
雑益は収益です。
現金過不足が最初に立った側と同じ側に、雑損または雑益が立つと覚えると迷いません。借方に立った現金過不足は借方の雑損(費用)へ、貸方に立った現金過不足は貸方の雑益(収益)へ移ります。
もう1つ、試験でよく出る形があります。決算日に現金過不足が発生した場合です。この場合は現金過不足を経由せず、いきなり雑損・雑益にします。
(借) 雑損 1,000 / (貸) 現金 1,000
原因を調べる時間がもうないので、仮の場所に置く意味がないからです。
この決算での処理は、決算整理の1つとして第3問でも問われます(単元34で再度扱います)。
現金のずれの扱いは、上場企業とそれ以外で大きく違います。上場企業では原因の分からないお金があること自体が問題で、J-SOXの内部統制でも重点的に確認されます。
この単元の確認問題
答えを見る前に、まず自分の言葉で答えてみてください。言葉にできないところが、そのまま本試験で止まるところです。
Q. 商品を売り上げ、代金として先方が振り出した小切手200,000円を受け取りました。借方に立つ科目は何ですか。
A. 現金です。他人振出小切手は通貨代用証券なので、現金として処理します。
自分が振り出した小切手なら当座預金の減少ですが、他人が振り出したものを受け取った場合は現金の増加です。誰が振り出したのかを問題文で必ず確認してください。
Q. ミナタカ商事の×2年3月31日の現金残高はいくらですか。
A. 128,000円です。
1,000,000 −800,000 −20,000 −52,000 = 128,000 という単純な引き算です。この金額が期末の貸借対照表にそのまま載ります。
Q. 現金の帳簿残高が50,000円、実際有高が47,000円でした。仕訳を切ってください。
A. (借) 現金過不足 3,000 / (貸) 現金 3,000
実際のほうが3,000円少ないので、帳簿の現金を3,000円減らします。現金を貸方に書いたので、相手側の借方に現金過不足が立ちます。
現金と現金過不足は、読んで分かることと、本番で点になることが別です。点にするための材料はこちらにまとめてあります。
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