システム構成と信頼性設計
システムを止めないための構成には、同じシステムを二重に用意するデュアルシステムや、複数のコンピュータを連携させるクラスタリングがあります。RAIDは複数のハードディスクを組み合わせて信頼性や速度を高める技術です。
システムを止めないための構成(デュアルシステム、クラスタリングなど)とRAIDの仕組みを説明できるようになります。また、稼働率・MTBF・MTTRを使った信頼性の計算ができるようになります。
システム構成と信頼性設計は、テクノロジ系の中でも計算問題として毎回のように出題される重要分野です。稼働率の計算式を暗記するだけでなく、直列・並列という考え方とセットで理解しておくと、応用的な出題にも対応できます。
システムを止めないための構成
業務で使われるシステムは、故障や障害によって停止すると、大きな損失につながることがあります。そこで、一部の機器が故障してもシステム全体が止まらないように設計する考え方を信頼性設計と呼びます。
代表的な構成の一つがデュアルシステムです。同じ処理を行うシステムを2系統用意し、常に両方を同時に稼働させて、互いの処理結果を照合しながら運用します。片方に異常が発生した場合は、その系統を切り離し、残ったもう一方だけで処理を続行します。信頼性は非常に高い反面、同じ規模のシステムを2つ用意するためコストが高くなります。
これに対してデュプレックスシステムは、通常時に稼働させる主系と、待機させておく従系という2系統を用意する方式です。主系に障害が発生すると、従系に切り替えて処理を引き継ぎます。デュアルシステムとデュプレックスシステムの違いは、2系統を常に同時稼働させるか、主系と従系という役割分担があるかという点です。従系の待機のさせ方には、すぐ切り替えられるよう常時起動させておくホットスタンバイと、普段は電源を切っておき必要になってから起動するコールドスタンバイがあります。
このほか、複数台のコンピュータをネットワークで連携させ、1台の高性能なコンピュータのように動作させる仕組みをクラスタリングと呼びます。処理を複数台に分散させて性能を高める負荷分散クラスタと、1台が故障した際に別の台がすぐに処理を引き継ぐフェールオーバークラスタがあります。
信頼性設計にはほかにも区別しておきたい考え方があります。フェールセーフは、故障が起きたときに被害を最小限に抑える安全な状態に導く考え方です(例:信号機が故障したら全方向を赤にする)。フェールソフトは、故障した部分を切り離してでも、機能を落としながらシステム全体は稼働させ続ける考え方です。フールプルーフは、利用者が誤った操作をしても危険な事態にならないよう備えておく考え方です(例:ドアを閉めないと動かない電子レンジ)。これらをまとめて、故障を前提にシステムを設計する考え方をフォールトトレラントと呼びます。
RAIDとシステムの構成方式
補助記憶装置についても、故障によるデータ損失を防ぐ工夫があります。代表的な技術がRAID(レイド)です。RAIDは、複数のハードディスクを組み合わせて1つの記憶装置のように扱うことで、信頼性や処理速度を高める技術です。
RAID0は、データを複数のディスクに分散して書き込む方式(ストライピング)で、同時に読み書きできるため処理速度が向上します。ただしデータの複製は作らないため、1台でも故障するとデータが失われ、信頼性は向上しません。RAID1は、同じデータを2台のディスクに同時に書き込む方式(ミラーリング)で、1台が故障してももう1台に同じデータが残るため運用を続けられますが、2台分の容量を使って1台分しか保存できません。一言でいえば、RAID0は速度重視で信頼性は上がらず、RAID1は信頼性重視で容量効率が下がる、という関係です。RAID5は、データとあわせて誤り訂正用の情報(パリティ)を複数のディスクに分散して記録する方式で、1台が故障しても残りのディスクから元のデータを復元でき、RAID1より容量効率も良いため広く使われています。
システムの処理のさせ方にも種類があります。1台のコンピュータですべての処理を行う集中処理に対し、複数のコンピュータで処理を分担する分散処理があり、複数の処理を同時に進める並列処理もあります。データを複製して複数の場所に持たせるレプリケーションは、障害時の備えやアクセス分散に使われます。
構成方式としては、利用者側(クライアント)からの要求をサーバ側で処理するクライアントサーバシステム、Webブラウザを使って利用するWebシステム、対等な立場のコンピュータどうしが直接データをやり取りするピアツーピア(P2P)、端末側の機能を最小限にし処理をサーバに任せるシンクライアントがあります。ネットワーク上でファイルを共有する専用の記憶装置をNASと呼びます。1台の物理的なコンピュータの中に複数の仮想的なコンピュータ(VM、仮想マシン)を作る技術を仮想化と呼び、ホストOSの上で動かすホスト型、ハードウェアを直接制御するハイパーバイザー型、OSの一部を共有して軽量に動かすコンテナ型があります。手元の端末から遠隔の仮想デスクトップに接続する仕組みをVDI、システムを稼働させたまま別の環境へ移し替えることをマイグレーションと呼びます。利用形態にも種類があり、要求にその都度応答する対話型処理、時間の遅れなく結果が求められるリアルタイム処理、一定量のデータをまとめて処理するバッチ処理があります。
稼働率の計算とMTBF・MTTR
システムの信頼性を数値で表す代表的な指標が稼働率です。稼働率は、システムが正常に動いている時間の割合を表し、0から1(または0%から100%)の数値で示されます。
稼働率は、次の2つの指標から計算できます。MTBF(平均故障間隔)は、故障が発生してから次に故障が発生するまでの平均時間で、どれくらいの間隔で正常に動き続けられるかを表します。MTTR(平均修復時間)は、故障が発生してから修理が完了するまでの平均時間です。稼働率は次の式で求められます。
稼働率 = MTBF ÷ (MTBF + MTTR)
例えば、あるシステムのMTBFが90時間、MTTRが10時間だとすると、稼働率は90÷(90+10)=0.9、つまり90%になります。稼働率が高いシステムほど、MTBFが長く(壊れにくく)、MTTRが短い(直りやすい)ということになります。
複数の装置を組み合わせたシステム全体の稼働率は、装置どうしのつながり方によって計算方法が変わります。直列につながれたシステム(どちらか一方でも故障すると全体が止まる構成)の稼働率は、それぞれの稼働率を掛け合わせて求めます。稼働率0.9の装置Aと稼働率0.8の装置Bを直列につないだ場合、全体の稼働率は0.9×0.8=0.72(72%)です。一方、並列につながれたシステム(両方とも故障しない限り全体は止まらない構成)の稼働率は、両方とも故障している確率を1から引いて求めます。装置Aの故障率は1−0.9=0.1、装置Bの故障率は1−0.8=0.2なので、両方とも故障する確率は0.1×0.2=0.02となり、並列システムの稼働率は1−0.02=0.98(98%)です。直列は稼働率を掛け算するほど下がり、並列は足し合わせるように上がる、という感覚を持っておくと計算の見通しが立てやすくなります。信頼性を高めたい重要な部分を並列に構成する(RAID1のミラーリングもこの考え方の一例です)ことが、システム設計の基本的な工夫の一つです。
このほか、要求を送ってから応答が返るまでの時間を表すレスポンスタイム(応答時間)や、性能を比較する基準となる試験を行うベンチマークも、システムの性能を測る指標です。経済性の面では、導入にかかる初期コストと、運用や保守にかかる運用コストを合わせた、システムを保有し続けるための総費用をTCO(Total Cost of Ownership)と呼び、システムを選ぶ際の判断材料になります。
この単元の確認問題
答えを見る前に、まず自分の言葉で答えてみてください。言葉にできないところが、そのまま本試験で止まるところです。
Q. 普段は主系だけを稼働させ、故障時に備えて従系を待機させておく構成方式を何と呼びますか。
A. デュプレックスシステムです。
常に2系統を同時稼働させるデュアルシステムとは異なり、主系と従系という役割分担があり、故障時に従系へ切り替える方式だからです。
Q. 同じデータを2台のディスクに同時に書き込み、1台が故障してもデータを失わない方式を何と呼びますか。
A. RAID1(ミラーリング)です。
2台のディスクに同一のデータを複製して書き込むことで、片方が故障してももう片方からデータを保持し続けられる方式だからです。
Q. 稼働率0.9の装置Aと稼働率0.8の装置Bを並列につないだ場合、システム全体の稼働率はいくつになりますか。
A. 0.98(98%)です。
並列システムは両方とも故障しない限り止まらないため、両方が同時に故障する確率(0.1×0.2=0.02)を1から引いて求めるためです。
システム構成と信頼性設計は、読んで分かることと、本番で点になることが別です。点にするための材料はこちらにまとめてあります。
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