ビジネスシステムとエンジニアリングシステム
POSシステムは販売時点の情報を管理し、SCMはサプライチェーン全体を最適化します。ERPは企業の経営資源を統合的に管理する仕組みで、RPAは定型的な事務作業を自動化する技術です。
POSシステムやSCM、ERPなど業種・業務ごとに使われる代表的な情報システムの名称と役割を説明できるようになります。エンジニアリングシステムやRPAなど、業務を自動化・効率化する技術の基本も押さえます。
企業活動の各分野で使われる業務システムの名称と機能を理解することは、ITパスポートの頻出テーマです。略語が多いため、対象業務とセットで整理することが得点につながります。
流通・金融・社会インフラのシステム
小売業の店舗で広く使われている情報システムがPOSシステム(Point of Sales、販売時点情報管理システム)です。商品が販売された時点で、商品名・価格・数量・購入時刻などの情報を、レジでのバーコード読み取りによって自動的に記録します。蓄積されたデータは、売れ筋商品の把握や季節・時間帯による売上変動の分析、在庫管理の最適化など、経営判断のさまざまな場面で活用されます。単なる会計の効率化にとどまらず、経営戦略のためのデータ収集ツールという側面を持っている点が重要です。
複数の企業をまたいで、原材料の調達から製造、物流、販売に至るまでの流れ全体を管理し最適化する仕組みをSCM(サプライチェーンマネジメント)と呼びます。自社内だけでなく取引先も含めた供給網全体で情報を共有し、過剰在庫や欠品を防いで無駄のない物流を実現することを目指します。
POSシステムが「販売の現場」に着目したシステムであるのに対し、SCMは「調達から販売までの供給網全体」に着目したシステムです。両者の対象範囲の違いを押さえておくと混同しません。
このほか、業種ごとに整備されている情報システムを流通情報システム、金融情報システムとまとめて呼びます。店舗の現場では、電波で情報をやり取りするRFID(ICタグ)という技術が、ICカードやセルフレジと組み合わせて省人化に使われています。移動や物流の分野では、GPS応用システムや、地図上に情報を重ねて扱うGIS(地理情報システム)、道路交通を支えるITS(高度道路交通システム)、料金所を通過しながら課金するETC(自動料金収受システム)が代表例です。また、商品がいつどこで作られ、どう流通したかを追跡できることをトレーサビリティ、電力の需給を情報通信で最適制御する送配電網をスマートグリッド、動画などのコンテンツを効率よく配信する仕組みをCDN(コンテンツデリバリネットワーク)、営業活動の情報を一元管理し案件の進捗を可視化する仕組みをSFA(営業支援システム)と呼びます。
企業全体を管理するシステムとRPA
企業には財務会計・人事・生産・販売・在庫管理など多くの業務があり、従来はそれぞれ個別のシステムが導入されるのが一般的でした。しかしシステムがバラバラだと、部門間で情報が連携しにくく、二重入力や情報のズレが起きやすいという問題がありました。
こうした課題を解決するのがERP(Enterprise Resource Planning、企業資源計画)です。会計・人事・生産・販売・在庫などのデータを一つのシステムに統合し、一元的に管理する仕組みで、ある部門のデータが他の部門にもリアルタイムに反映されます。ERPを実現するソフトウェアパッケージをERPパッケージと呼び、多くの企業がゼロから開発するのではなく、既存パッケージを自社向けにカスタマイズして導入します。会計や営業支援など業務ごとに作られた業務別ソフトウェアパッケージ、金融や医療など業種ごとに作られた業種別ソフトウェアパッケージもあわせて覚えておきましょう。
単元10のCRM(顧客関係管理)は顧客情報に、SCMは供給網に特化したシステムであるのに対し、ERPは企業活動全体の資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を統合的に管理します。「ERPは全社統合、CRMは顧客特化、SCMは供給網特化」と整理すると区別しやすくなります。
経営管理の考え方としては、顧客に価値が届くまでの活動の流れ全体をとらえるバリューチェーンマネジメント、暗黙知と形式知を変換しながら新しい知識を生み出すSECIモデル、品質を全社的に管理するTQC・TQM、社内の知識や経験を共有し活用するナレッジマネジメント、生産全体の中で制約となっている工程を見つけて改善するTOC(制約理論)があります。
また、パソコン上の定型的な事務作業をソフトウェアに代行させる仕組みをRPA(Robotic Process Automation)と呼びます。例えば、複数のシステムからデータをダウンロードして表計算ソフトに転記し、決まった書式のレポートを作成するといった、人が繰り返し行っていた作業をルールに沿って自動で実行します。ERPが業務データを統合する仕組みであるのに対し、RPAは人が行っていた入力や転記といった作業そのものを自動化する点が異なります。書籍や雑誌などの誌面レイアウトをコンピュータ上で組むDTP(DeskTop Publishing)のように、特定の業務に特化したソフトウェアパッケージがあることも押さえておきましょう。
エンジニアリングシステム(ものづくりを支える技術)
製造業では、設計から生産に至る工程を効率化するためにさまざまな情報技術が活用されており、これらを総称してエンジニアリングシステムと呼びます。
製品の設計をコンピュータ上で行う技術をCAD(Computer Aided Design)と呼びます。設計者は図面を手作業で描くより正確かつ効率的に設計でき、修正や変更も容易になります。設計データをもとに工作機械を制御し製造工程を自動化する技術をCAM(Computer Aided Manufacturing)と呼び、CADのデータをCAMに引き継ぐことで設計から製造までを連携させられます。設計や開発の複数の工程を同時並行で進め、開発期間を短縮する進め方をコンカレントエンジニアリングと呼びます。
工場全体の生産活動を計画し管理する仕組みが生産管理システムです。何をいつどれだけ作るかという計画の立案から、部品調達、進捗管理、完成品の在庫管理までを扱います。必要なものを必要なときに必要な量だけ生産・調達する考え方をJIT(ジャストインタイム)と呼び、在庫を極力持たずに無駄を省く方式で、かんばん方式とあわせてトヨタ生産方式の中核をなします。生産設備の稼働状況を感知するセンシング技術や、コンピュータ上で工程の動きを事前に検証するシミュレーションも、ものづくりの精度を高める技術として使われます。生産計画に合わせて必要な資材の量と時期を計算するMRP(資材所要量計画)、設備の組み替えによって多品種を柔軟に生産するFMS(フレキシブル生産システム)、無駄を徹底的に排除するリーン生産方式もあわせて押さえておきましょう。
近年は、工場の設備や製品の状態をセンサーで集めたデータをもとに、コンピュータ上に現実そっくりの姿を再現するデジタルツインという技術も広がっています。現実の設備(フィジカル)とコンピュータ上の情報処理(サイバー)を連携させ、シミュレーションの結果を現実の制御に反映する仕組み全体をサイバーフィジカルシステム(CPS)と呼びます。デジタルツインは、CPSを実現するための代表的な手法の一つと理解しておくとよいでしょう。
この単元の確認問題
答えを見る前に、まず自分の言葉で答えてみてください。言葉にできないところが、そのまま本試験で止まるところです。
Q. 商品が販売された時点の情報をリアルタイムに記録する仕組みを何と呼びますか。
A. POSシステム(販売時点情報管理システム)
POSシステムはレジでの販売時に商品名・価格・数量などの情報を記録し、売れ筋分析や在庫管理などの経営判断に活用されます。供給網全体を対象とするSCMとは着目する範囲が異なります。
Q. 企業の会計・人事・生産・販売などの基幹業務データを一元管理する仕組みを何と呼びますか。
A. ERP(企業資源計画)
ERPは企業内の各業務システムに散在していたデータを統合し、経営資源全体をリアルタイムに把握・管理できるようにする仕組みです。定型作業そのものを自動化するRPAとは目的が異なります。
Q. コンピュータ上で製品の設計を行う技術を何と呼びますか。
A. CAD(Computer Aided Design)
CADはコンピュータを使って設計図面を作成する技術で、設計の正確性向上や修正の効率化に貢献します。設計データはCAM(製造工程の自動化)に引き継がれます。
ビジネスシステムとエンジニアリングシステムは、読んで分かることと、本番で点になることが別です。点にするための材料はこちらにまとめてあります。
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