固定資産の売却
固定資産を売ったときの損益は、売却価額から帳簿価額を引いて求めます。帳簿価額は取得原価から減価償却累計額を引いた金額です。売却価額そのものは収益になりません。
帳簿価額を計算し、売却価額との差から売却損益を求められるようになります。期首に売った場合と期中に売った場合の違いが分かり、期中売却で当期分の減価償却費を先に計上できるようになります。2027年度から加わる除却・廃棄の処理も書けるようになります。
売却は第1問で頻出です。計算そのものは引き算ですが、何から何を引くのかを間違えると答えが合いません。特に期中に売ったときは、売る日までの減価償却費を先に計上してから損益を出すという二段構えになります。この順番を身につけておくと、第3問で固定資産の売却が決算整理に混ざってきても崩れません。
帳簿価額と売却価額の差が、損益になります
固定資産を売ったとき、いくら儲かったのかは帳簿にいくらで載っていたかと比べて決まります。
帳簿価額 = 取得原価 − 減価償却累計額 売却損益 = 売却価額 − 帳簿価額
帳簿価額より高く売れれば固定資産売却益(収益)、安ければ固定資産売却損(費用)です。
大事なのは、売却価額そのものは収益ではないという点です。300,000円で買ったものを200,000円で売っても、200,000円が儲けではありません。これは商品を売ったとき(売上)とはまったく違う扱いです。商品は売るために持っているので売価の全額が売上になりますが、固定資産は使うために持っているものなので、手放したときの差額だけが損益になります。
この単元では、設例のミナタカ商事の備品300,000円(耐用年数5年・定額法・年60,000円)を、×3年以降に売ったとしたらという形で見ていきます。設例そのものは設立初年度で終わっているため、その先を仮に延長した数字です。
期首に売ったとき(間接法)
まず、期首(=当期の減価償却をまだ1か月もしていない時点)に売った場合です。
ミナタカ商事の備品を、2年間使ったあとの×3年4月1日に200,000円で売り、代金は当座預金に入金されたとします。2年分の減価償却累計額は120,000円(60,000×2年)です。
仕訳では、その資産に関係する勘定を全部消すところから考えます。
(借) 減価償却累計額 120,000 / (貸) 備品 300,000 (借) 当座預金 200,000 / (貸) 固定資産売却益 20,000
手順は3つです。
- 備品を貸方に、取得原価のまま書いて消す(帳簿価額ではありません)
- 減価償却累計額を借方に書いて消す。累計額はもともと貸方にあるので、消すときは借方です
- 受け取った代金を借方に書き、差額を売却益または売却損にする
間接法では、備品300,000円と減価償却累計額120,000円が別々の勘定として帳簿に残っています。売却でその資産が会社から出ていく以上、両方とも消さなければなりません。片方だけ消すと、実在しない資産が帳簿に残ります。
借方が320,000、貸方が300,000なので、差額20,000は貸方に置きます。貸方に来た差額は売却益です。
期中に売ったとき、当期分の減価償却を先に計上します
実際には、期首ちょうどに売れることはまれです。期の途中で売ったときは、使っていた期間の減価償却費を先に計上してから、売却の計算に入ります。
同じ備品を、×3年11月30日に130,000円で売ったとします。当期(×3年4月1日〜)の4月から11月までの8か月使っています。
手順1:当期分の減価償却費を計上する
60,000 × 8/12 = 40,000 (借) 減価償却費 40,000 / (貸) 減価償却累計額 40,000
手順2:これで累計額は120,000+40,000=160,000。帳簿価額は140,000
300,000 − 160,000 = 140,000
手順3:売却の仕訳を書く
(借) 減価償却累計額 160,000 / (貸) 備品 300,000 (借) 当座預金 130,000 / (借) 固定資産売却損 10,000 /
借方の差額10,000が売却損です。
実際の試験では、手順1と手順3をまとめて1つの仕訳で書かせることもあります。その場合は減価償却費40,000を借方に直接置きます。
(借) 減価償却累計額 120,000 / (貸) 備品 300,000 (借) 減価償却費 40,000 / (借) 当座預金 130,000 / (借) 固定資産売却損 10,000 /
累計額が期首時点の120,000に戻っていることに注意してください。まとめて書くときは、当期分をまだ累計額に足していないからです。どちらの書き方でも損益は同じ10,000円の損になります。
月数の数え方は、期首の月から売った月までです。4月1日が期首で11月30日に売ったなら、4・5・6・7・8・9・10・11の8か月です。
直接法のときの書き方
減価償却を直接法で記帳している場合は、備品勘定そのものが帳簿価額になっています。減価償却累計額という勘定はありません。
先ほどの期首売却(帳簿価額180,000円、売却価額200,000円)なら、こうなります。
(借) 当座預金 200,000 / (貸) 備品 180,000
/ (貸) 固定資産売却益 20,000貸方の備品は帳簿価額です。間接法とは書き方がまったく違いますが、売却益20,000円は同じです。記帳方法が違っても、儲けの金額は変わりません。
3級で主に問われるのは間接法です。ただし直接法で出題されることもあるので、問題文に「直接法によって記帳している」と書かれていないかを最初に確認してください。
除却と廃棄(2027年度から3級の範囲に入ります)
使わなくなった固定資産は、売るとは限りません。捨てることもあります。この処理は2027年4月1日以降の試験から3級に加わります。それより前に受験する方は、ここは飛ばしてかまいません。
除却……使うのをやめて帳簿から外すが、まだ処分価値が残っている
売却価額の代わりに、見積処分価額を貯蔵品として資産に振り替えます。
(借) 減価償却累計額 160,000 / (貸) 備品 300,000 (借) 貯蔵品 10,000 / (借) 固定資産除却損 130,000 /
廃棄……捨てる。処分価値はない
受け取るものが何もないので、帳簿価額がそのまま損になります。
(借) 減価償却累計額 160,000 / (貸) 備品 300,000 (借) 固定資産除却損 140,000 /
形は売却とまったく同じです。違うのは、貸方に来るのが現金や当座預金ではないという点だけです。除却なら貯蔵品、廃棄なら何もありません。
期中に除却・廃棄したときも、売却と同じように当期分の減価償却費を先に計上します。
帳簿に載っているのに現物が無い固定資産は、実務でよく見つかります。使わなくなった時点で除却の処理をしていないためで、決算前の現物確認で初めて分かります。
この単元の確認問題
答えを見る前に、まず自分の言葉で答えてみてください。言葉にできないところが、そのまま本試験で止まるところです。
Q. 取得原価300,000円、減価償却累計額120,000円の備品を200,000円で売却しました。売却益はいくらですか。
A. 帳簿価額が180,000円なので、売却益は20,000円です。
売却価額200,000円をそのまま収益にすると、10倍近く儲けを大きく見せることになります。比べる相手は必ず帳簿価額です。
Q. 間接法で固定資産を売却するとき、貸方に書く備品の金額は帳簿価額と取得原価のどちらですか。
A. 取得原価です。帳簿価額ではありません。減価償却累計額は借方に別途書いて消します。
間接法では、備品勘定に取得原価がそのまま残っているからです。帳簿価額で消してしまうと、備品勘定に金額が残り、累計額も消えずに帳簿が壊れます。
Q. 決算日が3月31日の会社が、9月30日に備品を売却しました。当期分の減価償却費は何か月分ですか。
A. 6か月分です。4月から9月までを数えます。
使っていた期間だけを費用にするためです。ここを1年分にしてしまうと減価償却費も帳簿価額も狂い、売却損益まで連鎖して間違えます。
固定資産の売却は、読んで分かることと、本番で点になることが別です。点にするための材料はこちらにまとめてあります。
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