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減価償却(定額法)【決算整理】

簿記3級 無料テキスト 単元18/第5章 固定資産/重要度 ★★★★★/出題箇所 第1問・第3問/読む目安 55分 登録不要で読めます

ここだけ読めば

減価償却は、固定資産の取得原価を使う年数に配分する手続きです。現金は動きません。 定額法の1年分は(取得原価 − 残存価額)÷ 耐用年数です。

この単元を読み終えるとできること

備品の取得原価・耐用年数・残存価額から、定額法で1年分の減価償却費を計算できるようになります。間接法の決算整理仕訳を書き、減価償却累計額が資産のマイナスであることを説明できるようになります。期の途中で取得した資産について、月割で当期分の減価償却費を求められるようになります。

なぜこの順番でここに置いているか

固定資産を買った金額は、買った年だけの費用ではありません。使う年数に配分するのが減価償却です。第1問では決算整理仕訳として、第3問では精算表や財務諸表の整理事項として、ほぼ毎回出題されます。計算と仕訳と表示の3つがそろって初めて得点になる論点です。

減価償却は、買った金額を使う年数に配分する手続きです

ミナタカ商事は×1年4月5日に備品300,000円を購入し、代金は当座預金から支払いました。仕訳は次のとおりです。

(借)備品 300,000 /(貸)当座預金 300,000

ここで考えたいのは、この300,000円をいつの費用にするかです。支払ったのは×1年度ですが、備品はその年だけ使って捨てるものではありません。何年か使い続けます。もし300,000円を全額×1年度の費用にしてしまうと、×1年度だけ利益が大きく減り、×2年度以降は備品をタダで使っていることになります。どの年度の利益も、その年の実態を表さなくなります。

そこで、取得原価300,000円を使える年数で割り、毎年少しずつ費用にしていきます。この手続きが減価償却で、各年に配分された金額が減価償却費という費用の勘定です。

減価償却の対象になるのは、使っているうちに価値が減っていく資産です。備品のほか、建物や車両運搬具がこれにあたります。土地は使っても価値が減らないと考えるので、減価償却をしません。ミナタカ商事が持っている固定資産は備品300,000円だけなので、この単元で扱うのはこの1件です。

注意したいのは、減価償却では現金が動かないことです。お金が出ていったのは購入した4月5日の1回だけです。決算日に減価償却の仕訳を切っても、当座預金は1円も減りません。減価償却は、すでに払った金額を費用として計上する年に割り振る作業であって、支払いそのものではありません。ここを取り違えると、精算表でも財務諸表でも預金の金額を余計に減らしてしまいます。

減価償却は、お金を払うことではありません

定額法の3要素と計算式

減価償却費を計算するには、3つの数字が必要です。

この3つを使って1年分の費用を求める方法が定額法です。名前のとおり、毎年同じ額を費用にします。式は次のとおりです。

1年分の減価償却費 =(取得原価 − 残存価額)÷ 耐用年数

残存価額が0のときは、取得原価をそのまま耐用年数で割るだけになります。いまの3級では残存価額を0とする問題がほとんどですが、式としては引き算が入っていることを覚えておいてください。問題文に「残存価額は取得原価の10%」と書かれていたら、先に引き算をしてから割ります。引き算を忘れると、毎年の減価償却費が最後まで過大になります。

3要素はすべて問題文に与えられます。自分で決めるものではありません。特に耐用年数は、会社が「うちは3年で買い替えるから3年」と自由に決められるものではなく、資産の種類ごとに定められた年数に沿って決まります。試験では与えられた年数をそのまま使ってください。

もう1つ、取得原価の中身にも注意してください。取得原価は、その資産を使える状態にするまでにかかった金額の合計です。買った代金だけでなく、運送料や据付費のような付随費用も含めます。付随費用を費用として処理してしまうと、備品の金額が小さくなり、そこから計算する減価償却費も毎年小さくなります。取得の仕訳を間違えると、減価償却の答えが5年間ずれ続けるということです。ミナタカ商事の備品は付随費用のない300,000円ちょうどなので、この単元ではその金額をそのまま使います。

5年間で何が起きるかを表で確かめる

1年分が60,000円と分かったので、5年間で何が起きるかを並べてみます。表に出てくる金額は、すべて取得原価300,000円と年60,000円から計算したものです。

年度その年の減価償却費償却済みの累計帳簿価額
1年目60,00060,000240,000
2年目60,000120,000180,000
3年目60,000180,000120,000
4年目60,000240,00060,000
5年目60,000300,0000

帳簿価額は、取得原価から償却済みの累計額を引いた残りです。1年目なら 300,000 − 60,000 = 240,000円 です。年が進むごとに60,000円ずつ減り、5年目の終わりにちょうど0になります。残存価額を0としたので、5年間で取得原価の全額が費用に変わる計算です。逆にいえば、減価償却費の欄を5年分足して300,000円にならないときは、どこかで計算を間違えています。

この表には検算に使える関係が1つあります。どの年度でも、償却済みの累計 + 帳簿価額 = 取得原価 になります。3年目なら 180,000 + 120,000 = 300,000 です。2つの数字を別々に計算したあと、足して取得原価に戻るかを確かめれば、片方だけ間違えていることに気づけます。帳簿価額は、まだ費用にしていない残りという意味で未償却残高とも呼ばれます。呼び方が2つありますが、指しているものは同じです。

ミナタカ商事は×1年4月1日に設立した会社なので、×2年3月31日が最初の決算日です。したがって当期にあたるのは表の1年目だけです。×2年3月31日時点の償却済みの累計は60,000円、帳簿価額は240,000円になります。2年目以降の行は、これから毎年同じことを繰り返すという確認のために置いています。

定額法は、2つのステップだけです

間接法の仕訳では備品の金額を動かしません

計算した60,000円を仕訳にします。借方は費用が増えるので減価償却費です。迷うのは貸方です。書き方が2つあります。

直接法は、備品そのものを減らします。

(借)減価償却費 60,000 /(貸)備品 60,000

この方法だと備品勘定の残高は240,000円になります。金額としては正しいのですが、いくらで買った備品なのかが帳簿から分からなくなります。

間接法は、備品には触れず、減価償却累計額という別の勘定に積み上げます。ミナタカ商事の決算整理はこちらです。

(借)減価償却費 60,000 /(貸)減価償却累計額 60,000

この仕訳では備品勘定は300,000円のまま動きません。買ったときの金額300,000円と、これまでに費用にした60,000円が、別々の勘定に分かれて残ります。両方が帳簿に残るほうが情報として有用なので、3級では間接法が原則です。問題文に「間接法による」と書かれていなくても、特に断りがなければ間接法で処理します。

借方の減価償却費は、どちらの方法でも同じです。違うのは貸方だけだと覚えておくと混乱しません。

この仕訳は決算日に1回だけ切ります。期中に備品を使っていても、月末ごとに何かを記入することはありません。ミナタカ商事の場合、×1年4月5日に備品を買う仕訳を切ったあと、備品に関する記入は×2年3月31日の決算整理まで1件もない、ということです。決算整理仕訳と呼ばれるのはこのためで、第3問では決算整理事項の1つとして与えられます。

3級で使うのは間接法です

減価償却累計額の定位置が貸方である理由

減価償却累計額は、貸方に積み上がっていく勘定です。貸方が定位置と聞くと、負債か純資産か収益のどれかだと考えたくなりますが、どれでもありません。減価償却累計額は資産のマイナスです。

理由は、この勘定が何の代わりに置かれているかを見ると分かります。直接法では備品を60,000円減らしていました。資産の減少は貸方に書きます。間接法は、その備品の減少を備品勘定に書き込む代わりに、減価償却累計額という別の場所に書いているだけです。書く場所を移しただけなので、借方か貸方かは変わりません。だから貸方に積み上がります。

このように、ある資産から差し引く形で使う勘定を評価勘定といいます。単独では意味を持たず、必ず対応する資産とセットで読みます。減価償却累計額60,000円という数字だけを見ても何も分かりませんが、備品300,000円と並べて初めて、300,000円の備品のうち60,000円分をすでに費用にした、と読めます。

貸方残高だから負債、という覚え方をしていると、貸借対照表を作るときに減価償却累計額を負債の部に書いてしまいます。そうすると資産合計も負債合計も両方が過大になり、金額は一致してしまうため、見直しても間違いに気づきにくくなります。置き場所は資産の部です。備品のすぐ下に、マイナスとして表示します。

もう1つ、名前のとおりこの勘定は累計です。毎年の減価償却費60,000円が消えずに積み上がっていきます。ミナタカ商事は設立初年度なので×2年3月31日時点の残高は60,000円だけですが、翌期末には120,000円、その翌期末には180,000円と増えていきます。一方、損益計算書に載る減価償却費は毎年60,000円のままです。同じ60,000円から出発しているのに、減価償却累計額は毎年積み上がっていくのに対し、減価償却費は毎年ゼロから計上し直します。費用の勘定は決算で締め切られて翌期に残らず、資産・負債・純資産の勘定は翌期に繰り越されるという、5要素の性質の違いがそのまま出ています。

期の途中で買ったときは月割で計算します

ミナタカ商事は×1年4月5日に備品を買いました。会計期間は×1年4月1日から×2年3月31日までなので、期の初めから期末までまるまる使っていることになります。だから年額60,000円をそのまま計上できました。月割の計算は要りません。

しかし試験では、期の途中で買った資産の減価償却がよく問われます。この場合は、使った月数の分だけを計上します。

ここでは月割の手順を示すために、設例にない資産を1つ置きます。ミナタカ商事の備品は期首に近い4月の取得なので、この設例のままでは月割の練習ができないためです。

例:12月1日に備品120,000円(耐用年数5年、残存価額0)を取得した。決算日は3月31日である。

手順は2段階です。

  1. まず1年分を出します。120,000 ÷ 5年 = 24,000円
  2. 次に使った月数の割合を掛けます。12月・1月・2月・3月の4か月なので、24,000 × 4か月 ÷ 12か月 = 8,000円

1年分を先に出してから月割にする、という順序を崩さないでください。先に月数で割ってから年数で割ろうとすると、手順が増えて間違えます。

間違えやすいのは月数の数え方です。取得した月を1か月目として数えます。12月に取得したなら12月から3月までで4か月です。翌1月から数えると3か月になり、答えがずれます。また、取得日が12月1日でも12月28日でも、月単位で数えるので4か月で変わりません。

損益計算書と貸借対照表への載り方

減価償却の仕訳は、損益計算書と貸借対照表の両方に現れます。1つの仕訳が2つの表に分かれて出ていくところが、この論点が第3問で重く扱われる理由です。

損益計算書には、減価償却費60,000円が販売費及び一般管理費として載ります。ミナタカ商事の×1年度の販売費及び一般管理費490,000円の中に、この60,000円が含まれています。

貸借対照表には、資産の部に次の形で載ります。

備品       300,000減価償却累計額  △60,000 → 240,000

取得原価をまず書き、その下に減価償却累計額をマイナスで示し、差し引いた240,000円が備品の帳簿価額です。この書き方を控除形式といいます。ミナタカ商事の資産合計2,010,000円には、備品は240,000円として入っています。

問題で備品の金額を答えなさいと問われたとき、300,000円と240,000円のどちらを書くかで迷います。判断の基準は、聞かれているのが勘定の残高か、貸借対照表に載る価額かです。決算整理後残高試算表の備品なら300,000円です。試算表は勘定残高を並べたものなので、間接法をとる限り備品は取得原価のまま出てきます。貸借対照表の差引の金額を問われているなら240,000円です。減価償却累計額の60,000円は、どちらの表にも独立した行として現れます。

減価償却累計額は、貸方にありますが負債ではありません

定率法の予告(2027年度から3級の範囲に入ります)

2027年4月1日以降に実施される試験から、3級に定率法という別の償却方法が追加されます。2026年度中の試験では出題されないので、いまは定額法だけを確実にできるようにしてください。

違いだけ先に書いておきます。定額法は取得原価をもとに毎年同じ額を計上します。ミナタカ商事の備品なら、5年間ずっと60,000円です。定率法は、まだ費用にしていない残り、つまり帳簿価額に一定の率を掛けます。そのため最初の年ほど費用が大きく、年を追うごとに小さくなります。

違うのは1年分の金額の出し方だけです。間接法で仕訳を切ること、減価償却累計額が資産のマイナスであること、貸借対照表で控除形式で表示することは、どちらの方法でも同じです。この単元で身につけた、取得原価を耐用年数に配分するという考え方と間接法の仕訳は、定率法が加わってもそのまま使えます。

同じ備品でも、どの年にいくら費用にするかが違います
実務現場から

耐用年数は会社が自由に決めるものではなく、税法の別表に資産の種類ごとの年数が定められています。実務ではこの表を見て年数を決めます。

この単元の確認問題

答えを見る前に、まず自分の言葉で答えてみてください。言葉にできないところが、そのまま本試験で止まるところです。

Q. ミナタカ商事が×2年3月31日の決算で備品の減価償却を行いました。この仕訳によって当座預金はいくら減りますか。

A. 0円(当座預金は減りません)

備品の代金300,000円は、購入した×1年4月5日に当座預金から支払い済みです。減価償却は、すでに払ったその金額を各年度の費用に割り振る手続きなので、現金や預金は動きません。動くのは減価償却費と減価償却累計額だけです。

Q. ミナタカ商事の備品(取得原価300,000円、耐用年数5年、残存価額0)の1年分の減価償却費を、式を書いてから求めてください。

A. (300,000 − 0)÷ 5年 = 60,000円

定額法の式は(取得原価 − 残存価額)÷ 耐用年数です。残存価額が0なので、取得原価300,000円をそのまま耐用年数5年で割ります。定額法では毎年この60,000円が費用になります。

Q. この備品の3年目の決算が終わった時点で、償却済みの累計と帳簿価額はそれぞれいくらですか。式を書いてから答えてください。

A. 累計 60,000 × 3年 = 180,000円、帳簿価額 300,000 − 180,000 = 120,000円

定額法なので毎年60,000円ずつ同じ額を償却します。3年経過なら 60,000 × 3年 = 180,000円 が累計です。帳簿価額は取得原価から累計を引いた残りなので 300,000 − 180,000 = 120,000円 になります。

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