簿記3級の電卓 — 持ち込める条件と、本番で本当に使う4つの機能
日商簿記3級のネット試験(CBT)では、電卓は自分で持ち込みます。試験画面に電卓は用意されていませんし、パソコンの計算機能も使えません。そして、持ち込める電卓には条件があります。
会場で「その電卓は使えません」と言われても、代わりの電卓は貸してもらえません。確認するのは当日ではなく、いまです。
持ち込める電卓の条件
| 可否 | |
|---|---|
| 四則演算(+−×÷)のみの電卓 | 使えます |
| 日数計算・時間計算・換算・税計算・検算の機能 | 音が出なければ使えます |
| 印刷機能(レシートが出るもの) | 使えません |
| 音が出る機能 | 使えません |
| プログラム機能(関数電卓、売価・原価計算の公式を記憶できるもの) | 使えません |
| 辞書機能 | 使えません |
| そろばん | 使えません(統一試験では使えます) |
| スマートフォンの電卓アプリ | 使えません |
判断に迷うのは「税計算キー(税込・税抜)が付いている電卓」です。これは使えます。音が出ず、公式を記憶させるプログラム機能でもないからです。家電量販店で売られている一般的な事務用電卓は、ほぼすべて条件を満たします。
使えないのは、理系の学生が持っているような関数電卓(sin・cos・logのキーがあるもの)と、レジ用のプリンター付き電卓です。この2種類だけ避ければ、まず問題ありません。
電卓の選び方 — 3級では5つだけ見ます
まだ電卓を持っていない、あるいは買い替えを考えているなら、見るところは5つです。
1. 桁数は12桁
3級の決算問題では、売上高や資産合計が数百万円から数千万円になります。8桁だと桁あふれを起こします。12桁を選んでください。10桁でも足りますが、2級以降を考えるなら12桁が安心です。
2. GTキーがあること
GT(グランドトータル)は、計算した答えを自動的に足し込んでいく機能です。試算表の縦計や、複数の費用の合計を出すときに効きます。3級で最も使うキーです。 詳しい打ち方は後述します。
3. メモリーキー(M+ / M− / MR / MC)があること
途中の計算結果を一時的に置いておく機能です。減価償却の月割や、貸倒引当金の差額補充を1回の操作で出せます。
4. 本体のサイズと重さ
小さすぎる電卓は指が当たって打ち間違えます。手のひらより一回り大きいサイズ(およそ幅10cm×奥行15cm以上)で、机の上で滑らない重さのあるものを選んでください。カード型の薄い電卓は本番向きではありません。
5. 早打ち対応(キーロールオーバー)
前のキーを離す前に次のキーを押しても、両方とも認識してくれる機能です。速く打つと数字が飛ぶ電卓は、本番で確実に事故を起こします。店頭で試せるなら、素早く「1・2・3・4・5」と打って全部表示されるか確かめてください。
なお、ルート(√)キーは3級では一度も使いません。 あっても構いませんが、選ぶ基準にはなりません。
本番で本当に使う4つの機能
3級の60分は、電卓を打っている時間がかなりの割合を占めます。ここで差がつきます。
① GTキー — 複数の合計を一度に出す
たとえば、決算整理後の販売費及び一般管理費を合計する場面です。
給料240,000/支払家賃120,000/保険料10,000/通信費36,000/水道光熱費16,000/減価償却費60,000/貸倒引当金繰入8,000
これを普通に足すと、途中でどこまで足したか分からなくなります。GTを使うとこうなります。
240000 = 120000 = 10000 = 36000 = 16000 = 60000 = 8000 = GT → 490,000
「=」を押すたびに、その答えがGTメモリに足されていきます。 最後にGTを押すと合計が出ます。1つずつ確かめながら打てるので、途中でつまずいても最初からやり直す必要がありません。
同じ要領で、掛け算の結果を足し込むこともできます。商品有高帳の先入先出法で、単価の違う2つの層をまとめて払い出すときです。
100 × 200 = (20,000) 150 × 230 = (34,500) GT → 54,500
これがGTがいちばん活きる場面です。1行ずつ電卓に打ち込んで、最後にGTを1回押すだけで払出金額が出ます。
② メモリーキー — 減価償却の月割
期中に取得した固定資産の減価償却は、「1年分を出してから月数で按分する」という2段階です。
取得原価360,000円・耐用年数6年・10月1日取得・決算日3月31日(6か月分)
360000 ÷ 6 = (60,000) ← 1年分 × 6 ÷ 12 = (30,000) ← 6か月分
これは電卓を1回も止めずに打てます。メモリーが要るのは、複数の資産をまとめて合計するときです。
240000 ÷ 4 = M+ (備品A 60,000をメモリへ) 360000 ÷ 6 × 6 ÷ 12 = M+ (備品B 30,000をメモリへ) MR → 90,000
MR(メモリーリコール)を押すと合計が出ます。GTでも同じことができますが、GTを別の集計に使っている最中はメモリーを使う、と役割を分けておくと混乱しません。
③ 定数計算 — 同じ率を何度も掛ける
貸倒引当金の設定で、売掛金と受取債権それぞれに2%を掛けるような場面です。多くの電卓では、掛ける数を先に入れて「×」を2回押すと、その数が固定されます。
0.02 × × (2%を固定) 400000 = (8,000) 250000 = (5,000)
この操作は電卓の機種によって異なります。 手持ちの電卓で一度試して、動くかどうか確かめておいてください。動かない機種なら、素直に毎回打ち直せば済む話です。
④ AC と C の使い分け
- C(クリア):いま表示している数字だけを消します。打ち間違えたときはこれです。
- AC(オールクリア):計算中の内容をすべて消します。
打ち間違えたときに毎回ACを押していると、それまでの計算がすべて消えます。Cで直せる場面でACを押さない。 これだけで、やり直しの回数が目に見えて減ります。
なお、GTメモリはACでは消えない機種が多く、GTキーを2回押すか、専用の操作で消します。新しい集計を始める前にGTを空にするのを忘れると、前の計算が混ざった数字が出ます。これは本番でとても起こりやすい事故です。
本番でやってはいけないこと
音を出さないでください。 キーを叩く音そのものは仕方がありませんが、電源オンの音やメロディが鳴る設定になっている電卓は持ち込めません。買ったときの設定のまま使っていない人は、一度確認してください。
電卓を2台持ち込むことはできません。 予備を鞄に入れておくのは構いませんが、机の上に出せるのは1台です。
電池を確認してください。 太陽電池と電池の併用型(ツインパワー)が主流ですが、電池が切れていると室内の照明だけでは表示が薄くなります。試験の1週間前に、明るくないところで動くか確かめておくと安心です。
打ち方の練習は、問題を解きながらやってください
電卓の練習だけを切り出してやる必要はありません。普段の問題演習を、すべて本番で使う電卓で解いてください。 これだけで十分です。
やってはいけないのは、家ではスマートフォンの電卓アプリで解いて、本番だけ電卓を使うことです。キーの位置が指に入っていないと、1問あたり10秒から20秒余計にかかります。60分の試験でこれは致命的です。
よくある質問
Q. いくらくらいの電卓を買えばよいですか。
A. 2,000円から4,000円の事務用電卓で十分です。1,000円未満のものはキーの反応が悪く、早打ちに対応していないことが多いので避けてください。逆に1万円以上の電卓が必要になる場面は、3級にも2級にもありません。
Q. 電卓は右手と左手のどちらで打つべきですか。
A. どちらでも構いません。ただし、右利きの人が左手で電卓を打てるようになると、ペンを持ち替えずに済むぶん速くなります。学習を始めたばかりなら、この機会に左手打ちを試す価値はあります。すでに右手で慣れているなら、いまから変える必要はありません。
Q. スマートフォンの電卓アプリでは受けられませんか。
A. 受けられません。スマートフォンは試験室に持ち込めません。荷物はロッカーに預けます。
Q. 統一試験(ペーパー試験)でも同じ条件ですか。
A. 電卓の条件はほぼ同じですが、統一試験ではそろばんも使えます。ネット試験ではそろばんは使えません。
Q. 会場で電卓が使えないと言われたらどうなりますか。
A. その電卓は使えず、代わりの電卓も貸してもらえません。電卓なしで受けることになります。条件は必ず事前に確認してください。
関連ページ
簿記3級を、無料で最後まで
38単元のテキストは登録も料金も不要で読めます。 仕訳を切ると財務諸表が動く「財務諸表ラボ」と、361問の問題演習、 簿記専用のAIチューターは無料登録から使えます。
無料ではじめる 登録は無料。メールアドレスだけで始められます。