ネットワーク
ネットワークはLANとWANに分かれ、通信の手順はOSI参照モデルやTCP/IPという階層構造で整理されています。IPアドレスとMACアドレスは機器を識別する役割を担い、DNSがドメイン名と対応付けます。
OSI参照モデルとTCP/IPの階層構造、ネットワーク機器とIPアドレス・MACアドレスの役割、無線LANや移動体通信の規格、主要な通信プロトコルを理解し、説明できるようになります。
インターネットの仕組みはあらゆるITサービスの土台であり、ITパスポート試験でも高い頻度で出題される最重要分野の一つです。基本構造を理解しておくと、業務でのネットワークトラブルの切り分けにも役立ちます。
ネットワークの基礎とOSI参照モデル
限られた範囲(会社や家庭など)を結ぶネットワークをLAN(ローカルエリアネットワーク)、地理的に離れた拠点同士を結ぶネットワークをWAN(ワイドエリアネットワーク)と呼びます。一言で区別すると、LANは自社ビルの中など狭い範囲、WANは本社と支社をつなぐような広い範囲のネットワークです。インターネットは、世界中のLANやWANが相互に接続された巨大な集合体といえます。
インターネットでは、データを細かく分割して送ります。大きな手紙をそのまま送らず、ハガキに分けて送り、届いた先で組み立て直すイメージで、この小包のような単位をパケットと呼びます。パケットに分けることで、回線を効率よく使い、一部が届かなくてもその部分だけ送り直せるという利点があります。
こうした通信の手順を整理するために、国際標準化機構が定めたOSI参照モデルがあります。通信の役割を7つの階層(レイヤー)に分けており、下から順に「物理層」「データリンク層」「ネットワーク層」「トランスポート層」「セション層」「プレゼンテーション層」「アプリケーション層」となります。各層が役割を分担することで、通信機器やソフトウェアの開発・保守がしやすくなります。
実際のインターネットで広く使われているのは、OSI参照モデルを簡略化したTCP/IP階層モデルです。「ネットワークインタフェース層」「インターネット層」「トランスポート層」「アプリケーション層」の4階層で構成され、それぞれがOSI参照モデルの複数の層に対応しています。データの信頼性ある送受信を担うTCPと、宛先を示すIPという2つのプロトコルの名前を組み合わせた呼び方です。
OSI参照モデルの7層それぞれに専用の技術や機器が対応しており、例えば物理層はケーブルの規格、ネットワーク層はIPアドレスによる経路選択、アプリケーション層はWebやメールのやり取りを担当します。層ごとに役割が独立しているため、ある層の技術を変更しても他の層に影響が及びにくいという利点があります。試験ではOSI参照モデルとTCP/IP階層モデルの層の名前と対応関係が頻出なので、下から順に言えるようにしておくと安心です。
ネットワーク機器とIPアドレス
社内LANを構築するには、パソコンをネットワークにつなぐためのネットワークインタフェースカード(NIC)、機器同士を結ぶケーブルに加え、いくつかの接続装置が必要です。ハブは届いたデータを接続されたすべての機器にそのまま送り出す装置、スイッチは宛先の機器だけにデータを届ける装置、ルータは異なるネットワーク同士をつなぎ、最適な経路を選んでデータを届ける装置です。一言で区別すると、ハブは全員に配る、スイッチは宛先だけに届ける、ルータはネットワークとネットワークをつなぐ役割です。社内ネットワークから外部へ出る際の出入口となる機器をデフォルトゲートウェイ、外部との通信を代理で行い負荷を減らしたり安全性を高めたりする仕組みをプロキシと呼びます。
ネットワークに接続された機器を識別する番号がIPアドレス、住所に例えると分かりやすい仕組みです。一方、NICなどの機器そのものに割り振られた固有の番号がMACアドレスです。一言で区別すると、IPアドレスはネットワーク上の住所で状況により変わり得るのに対し、MACアドレスは機器そのものに刻まれた変わらない番号です。IPv4は32ビットの数値を「192.168.1.1」のように区切って表記し、より多くのアドレスを扱えるIPv6への移行も進んでいます。インターネット上で重複しないグローバルIPアドレスと、LAN内だけで使うプライベートIPアドレスがあり、後者が外部に出る際はNATによって変換されます。
数字の羅列であるIPアドレスの代わりに使う「www.example.co.jp」のような文字列をドメイン名、これとIPアドレスを対応付ける仕組みがDNSです。DNSは電話帳に例えられ、名前を尋ねると住所(IPアドレス)を返してくれます。Webサイトを表示するための住所書式がURLです。
ネットワーク機器の設定を柔軟に変更できるようにするVLAN(仮想LAN)は、1つの物理的なネットワークを複数の仮想的なネットワークに分ける技術で、部署ごとに通信を分離したい場合などに使われます。ソフトウェアで通信経路の制御を集中管理するSDN(Software-Defined Networking)という考え方も広がっています。無線LANのアクセスポイントを識別する名前はESSID、データを送る速さはbps(bits per second、ビット/秒)という単位で表します。オフィスのネットワークを構築する際は、こうした機器の役割とIPアドレス・MACアドレスの仕組みをあわせて理解しておくことが大切です。
無線LANと移動体通信
ケーブルを使わずに電波でネットワークに接続する技術が無線LANです。規格はIEEE802.11で定められ、末尾のアルファベットで速度や周波数帯が異なります。新しい規格は「Wi-Fi 4/5/6/6E」という呼び方でも整理されており、数字が大きいほど新しく、通信速度が速く、より多くの機器を安定してつなげます。似た響きのWiMAXは、無線LANより広い範囲(数km単位)を電波でカバーする通信方式で、屋外の広域通信に使われる点が無線LANと異なります。無線LANを識別する名前がSSID(ESSID)、機器同士を簡単に接続する仕組みがWPS、スマホなどを直接つなぐWi-Fi Direct、複数のアクセスポイントで広い範囲をカバーするメッシュWi-Fiもあります。暗号化は、脆弱なWEPに代わりWPA2・WPA3の利用が推奨されます。
工場やセンサーなどのIoT機器は、LPWA(省電力で広い範囲に届く通信)やBLE(近距離向けの省電力な通信)でつながることが多く、機器の近くでデータを処理して通信量を減らすエッジコンピューティングと組み合わせて使われます。通信距離が近いか遠いか、速度が高速か低速か、消費電力はどうかという観点で、用途に応じた通信方式が使い分けられています。センサーのように電池で長期間動かす機器はLPWA、スマートフォンとイヤホンのような近距離の機器同士はBLEが向いているというように、用途によって最適な選択肢が変わってきます。
スマートフォンは移動体通信規格(LTE、5Gなど)の基地局を通じて通信します。回線を持つ通信事業者から回線を借りてサービスを提供するMVNO、インターネットへの接続を提供するISPもこの仕組みを支えています。移動しながらの通信を支えるハンドオーバーやローミング、複数の周波数帯をまとめて速度を上げるキャリアアグリゲーション、スマホの回線を他機器と共有するテザリング、契約者情報を記録するSIMカードとその電子版eSIM、電話番号を変えずに事業者を変更できるMNPも、通信サービスの用語として押さえておきましょう。
通信プロトコルとインターネットサービス
ネットワーク上でやり取りされるデータの形式や手順を定めた共通のルールをプロトコルと呼びます。言葉が通じない相手と会話できないのと同じで、送る側と受ける側が同じ手順に従うことで、はじめて通信が成立します。Webページを閲覧する際のプロトコルがHTTP、これに暗号化を加えたものがHTTPS(HTTP over TLS)です。Webサイトのアドレスが変わったときなどに、別のアドレスへ自動的に案内する仕組みをリダイレクトと呼び、URLの変更やログイン後の画面遷移などで使われます。
電子メールのやり取りには複数のプロトコルが役割分担をしています。メールを送信する際に使うのがSMTP、受信したメールをサーバーからダウンロードして端末側で管理するのがPOP、サーバー上でメールを管理し複数端末から同じ状態を見られるのがIMAPです。一言で区別すると、SMTPは送るためのプロトコル、POP・IMAPは受け取ったメールを管理するためのプロトコルです。このほか、ファイルを転送するFTP、時刻を合わせるNTP、IPアドレスを自動的に割り当てるDHCP、通信の種類を区別するポート番号、信頼性より速さを優先するUDP(TCPと対になる存在)もよく使われます。
メールを複数の宛先に一斉送信する同報メール、名簿にメールを配信するメーリングリスト、受信メールを保管するメールボックス、宛先を他の受信者にも見える形で示すccと、見えない形で示すbccも基本的な用語です。Webサイトがブラウザに残すCookieは、お店の常連さんのスタンプカードのようなもので、ログイン状態の維持などに使われます。メールに画像や添付ファイルを載せるMIME、更新情報を配信するRSS、ネット上にファイルを保管するオンラインストレージも、身近なインターネットサービスとして押さえておきましょう。
プロトコルの名前と用途の組み合わせを覚えておくと、業務でメールが届かないなどのトラブルが起きたときにも、どこを確認すればよいかの見当がつけやすくなります。
通信の速さとデータ量の見積り
ネットワークの問題では、用語を覚えるだけでなく「何秒かかるか」を計算させる出題があります。使う知識はごく限られているので、ここで型を作っておきます。
通信の速さを表す単位がbps(bits per second)です。1秒間に何ビット送れるかを表し、1,000倍ごとにkbps、Mbps、Gbpsと繰り上がります。ここで必ず引っかかるのが、通信の速さはビット、ファイルの大きさはバイトという点です。1バイトは8ビットなので、8Mbpsの回線で8Mバイトのファイルを送るとき、かかる時間は8÷8=1秒ではありません。8Mバイトは64Mビットなので、64÷8で8秒かかります。単位をビットにそろえてから割る、これが計算の型です。
もう一つ、カタログに書かれた速さがそのまま出ることはありません。実際に出る速さを実効速度(実効伝送速度)と呼びます。通信には宛先などの制御情報が一緒に流れ、他の利用者と回線を分け合い、機器の処理でも待ちが生じるためです。理論値に対して実際にどれだけ使えているかの割合を伝送効率(回線利用率)といい、「実効速度=回線速度×伝送効率」で見積もります。100Mbpsの回線で伝送効率が60%なら、実効速度は60Mbpsです。試験では、この実効速度を求めてから所要時間を計算させる形がよく出ます。
データを小さくして送る圧縮も、所要時間に直結します。10Mバイトのファイルを圧縮率50%にできれば、送るデータは5Mバイトになり、所要時間もおよそ半分になります。画像や動画のように容量の大きいものほど、この効果が効きます。
データそのものは、宛先などの情報を付けたパケットという小さな単位に分けて送られます。細かく分けて送る方式では、1本の回線を多数の利用者で分け合え、途中で1つのパケットが失われても、その部分だけを送り直せば済みます。混雑時に特定の通信を優先する仕組みをQoSといい、遅れが致命的になる音声通話やテレビ会議を先に通す、といった制御に使われます。
計算問題は、①単位をビットにそろえる、②実効速度を求める、③データ量÷速さで割る、の3手順に落とせます。手が止まったときは、まず単位を書き出してください。
この単元の確認問題
答えを見る前に、まず自分の言葉で答えてみてください。言葉にできないところが、そのまま本試験で止まるところです。
Q. 地理的に離れた拠点同士を結ぶネットワークを何と呼びますか。
A. WAN(ワイドエリアネットワーク)
WANは本社と支社のように離れた拠点間を結ぶ広域のネットワークであり、会社や家庭など限られた範囲を結ぶLANと対比される用語だからです。
Q. ネットワーク機器そのものに割り振られた固有の番号で、変わらない識別子を何と呼びますか。
A. MACアドレス
MACアドレスは機器に固有の番号であり、接続する場所や状況によって変わり得るIPアドレスとは役割が異なるためです。
Q. 無線LANより広い範囲を電波でカバーする通信方式で、無線LANと混同しやすいものは何ですか。
A. WiMAX
WiMAXは屋外の広い範囲(数km単位)をカバーする無線通信方式であり、家庭やオフィスなど限られた範囲をカバーする無線LANとは通信範囲の点で異なるためです。
ネットワークは、読んで分かることと、本番で点になることが別です。点にするための材料はこちらにまとめてあります。
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