システム戦略と業務プロセス
情報システム戦略は、経営戦略を実現するためにIT投資の方向性を定める活動で、エンタープライズアーキテクチャによって組織全体を整理します。BPRやBPMは業務プロセスを改善する手法で、RPAなどのITを使った効率化とあわせて活用されます。
経営戦略とIT戦略を結びつける考え方や、業務プロセスを改善するBPRなどの手法、そしてクラウドを中心としたソリューションビジネスの形態を説明できるようになります。
システム戦略は経営とITをつなぐ重要な領域で、IT投資が経営目標にどう貢献するかを理解する視点が問われます。SaaS・PaaS・IaaSの違いやBPR、エンタープライズアーキテクチャは試験でも定期的に出題されます。
情報システム戦略とEA
企業がITに投資するときは、思いつきで機器やソフトを導入するのではなく、経営の目標に沿って計画を立てる必要があります。この計画を情報システム戦略(IT戦略)と呼びます。
情報システム戦略を立てる出発点は、経営戦略や事業戦略です。経営戦略は、自社の強み・弱み・機会・脅威を分析するSWOT分析などを通じて、具体的な戦略目標として整理されます。情報システム戦略は、この戦略目標を実現するために、どんな情報システムを整備するかを定める役割を持ちます。経営戦略が「何を目指すか」を決め、情報システム戦略が「ITでどう支えるか」を決める、という関係で理解しておくとよいでしょう。企業によっては、この橋渡し役としてCIO(最高情報責任者)を置き、IT投資が経営目標に沿ったものになるよう統括させます。
組織が大きくなると、部門ごとに別々のシステムが導入され、全体として無駄が生じやすくなります。これを防ぐ考え方がエンタープライズアーキテクチャ(EA)です。EAでは、組織の姿を4つの階層に分けて整理します。業務内容を整理するビジネスアーキテクチャ、扱うデータを整理するデータアーキテクチャ、それを支えるアプリケーションを整理するアプリケーションアーキテクチャ、ハードウェアやネットワークの基盤を整理するテクノロジアーキテクチャです。現状の姿(As-Is)と目指す姿(To-Be)を比較し、そのギャップを埋める計画を立てることで、部門ごとの個別最適ではなく組織全体の全体最適を目指します。
このほか、業務の記録を正確に処理する基幹システムをSoR(Systems of Record)、顧客とのつながりを深めるためのシステムをSoE(Systems of Engagement)と呼び分けることがあります。基幹システムは正確さと安定稼働が求められるのに対し、SoEは顧客との関係づくりを重視するため、変化への対応力が求められます。両者は目的が異なるため、同じ基準で管理しようとすると無理が生じやすい点に注意が必要です。社内の情報を横断的に検索できるエンタープライズサーチのような仕組みも、情報システム戦略の一環として整備されます。
情報システム戦略やEAは、一度作って終わりというものではありません。経営環境や事業戦略が変われば、それに合わせて見直しが必要になります。定期的にAs-Isの姿を棚卸しし、To-Beとのギャップを確認し続けることが、経営とITの整合性を保つうえで欠かせません。
業務プロセスの分析と改善
業務を改善する土台になるのが、業務プロセスを目に見える形に描くモデリングです。代表的な手法として、データの関係を図で表すE-R図(Entity Relationship Diagram)、データの流れを表すDFD(Data Flow Diagram)、業務の流れを表記するBPMN(Business Process Model and Notation)があります。現状の業務をこうした図に起こすことで、どこに無駄や重複があるかが見えやすくなります。
業務プロセスを見直す手法には、踏み込みの度合いが異なる2つの考え方があります。BPR(Business Process Reengineering、業務プロセス改革)は、既存の手順を前提にせず、業務の目的に立ち返ってゼロベースで業務プロセス全体を再設計する手法です。一方、BPM(Business Process Management)は、業務プロセスを継続的に管理・改善していく取り組みです。一言で区別すると、BPRは一度きりの抜本的な作り直し、BPMは日常的な改善サイクルという違いになります。業務プロセスの実行を仕組みとして自動的に流すことをワークフローと呼びます。
定型的な事務作業をソフトウェアのロボットに代行させるRPA(Robotic Process Automation)も、業務効率化の代表的な手段です。人が行っていたデータ入力や転記といった作業を自動化し、担当者はより判断が求められる業務に集中できるようになります。
システムを導入した後は、実際に使いこなせているかを確認することも欠かせません。従業員が情報システムを活用する能力をデジタルリテラシーと呼び、この能力を高める教育や普及啓発が重要です。取り組みを楽しく続けられる工夫をゲーミフィケーション、IT活用の格差をデジタルディバイドと呼びます。導入したシステムは、投資対効果分析や利用者満足度調査によって定期的に評価し、古くなって安全性や効率性が下がったレガシーシステムは、廃棄や刷新を検討します。
こうした業務改善やIT活用の取り組みは、情報システム部門だけで完結するものではありません。実際に業務を担う現場の一人ひとりが、自分の業務プロセスをモデルとして捉え、無駄がないかを考える姿勢が求められます。試験でも、業務フローや利用実態のデータから問題点を読み取る力が問われる場面があります。
クラウドとソリューションビジネス
顧客が抱える経営課題や業務課題に対して、システムの企画から構築、運用までを請け負い、解決策を提供するビジネスをソリューションビジネスと呼びます。自社だけで課題を解決しようとするのではなく、専門知識を持つ企業に相談し、問題解決の提案を受ける関係です。複数のハードウェアやソフトウェアを組み合わせ、顧客の要望に合ったシステムを構築するSI(System Integration、システムインテグレーション)も、ソリューションビジネスの代表的な形態です。
近年は、システムを自社で保有せず、インターネット経由でサービスとして利用するクラウドコンピューティングの活用が広がっています。自社の設備でシステムを構築・運用する従来型の方式はオンプレミスと呼ばれ、クラウドと対になる言葉として使われます。
クラウドサービスは、事業者がどこまで用意してくれるかによって3つに分かれます。IaaS(Infrastructure as a Service)は、サーバやネットワークなどの基盤だけを事業者が用意し、OSやアプリケーションは利用者が自分で用意します。PaaS(Platform as a Service)は、OSやミドルウェアまで事業者が用意し、利用者はその上で動くアプリケーションだけを用意します。SaaS(Software as a Service)は、アプリケーションそのものを事業者が用意し、利用者はすぐに使い始められます。一言でいえば、事業者が用意する範囲が「基盤だけ」ならIaaS、「土台まで」ならPaaS、「完成品」ならSaaSという整理です。パソコンの利用環境をサービスとして提供するDaaS(Desktop as a Service)もこの仲間です。
クラウドの提供形態にも違いがあります。不特定多数の利用者が共有するパブリッククラウド、自社専用に用意されるプライベートクラウド、両者を組み合わせるハイブリッドクラウド、複数のクラウド事業者を併用するマルチクラウドがあります。
このほか、特定の業務向けソフトをインターネット経由で提供するASP(Application Service Provider)、システムの運用そのものを外部に委託するアウトソーシング、自社のサーバを他社の施設に置いて運用を任せるハウジングサービス、サーバ自体を貸し出すホスティングサービス、システムの監視や運用を専門業者が代行するマネージドサービスがあります。ハウジングは場所を借りる、ホスティングは機器ごと借りる、という違いで区別すると覚えやすくなります。
この単元の確認問題
答えを見る前に、まず自分の言葉で答えてみてください。言葉にできないところが、そのまま本試験で止まるところです。
Q. 組織を4つの階層に分けて、業務とシステムの関係を体系的に整理する考え方を何と呼びますか。
A. エンタープライズアーキテクチャ(EA)
EAはビジネス・データ・アプリケーション・テクノロジの4階層で組織を整理し、部門ごとの個別最適ではなく組織全体の最適化を目指す枠組みです。
Q. 既存業務を前提とした継続的な改善ではなく、業務の目的に立ち返ってゼロベースで業務プロセス全体を作り直す手法を何と呼びますか。
A. BPR(業務プロセス改革)
BPRは業務プロセスの抜本的な再設計を指し、業務プロセスを継続的に管理・改善していくBPMとは踏み込みの度合いが異なります。
Q. OSやミドルウェアまで事業者が用意し、利用者はその上で動くアプリケーションだけを用意するクラウドサービスの形態を何と呼びますか。
A. PaaS(Platform as a Service)
事業者が用意する範囲は、基盤だけのIaaS、土台までのPaaS、完成品のSaaSの順に広がります。PaaSはOSやミドルウェアまでを事業者側が担う形態です。
システム戦略と業務プロセスは、読んで分かることと、本番で点になることが別です。点にするための材料はこちらにまとめてあります。
- この単元の問題 19問(どこをどう間違えたかまで解説)
- この単元のひっかけ 2件(本試験がどう引っかけてくるか)
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